ポールダノ 映画。 『ワイルドライフ』映画レビュー「個性派俳優ポールダノの初監督作品は機能不全な田舎家族!?」

ポール・ダノ初監督作『ワイルドライフ』壊れゆく家族を14歳の息子の視点で描く|キャリー・マリガン&ジェイク・ギレンホール主演、ゾーイ・カザン共同脚本

ポールダノ 映画

無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。 いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。 ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。 まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。 ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。 苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。 「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。 この映画の最後に登場人物の一人が呟くセリフ「What the fuck. 」が全てを集約している気がします。 無人島で漂流していた男が海岸で見つけた死体。 それはまるでスイスアーミーナイフのようにマルチツールばりの活躍をして男を助ける。 ここだけ切り取ると????の連続で、どんだけぶっ飛んだ映画なんだろうと思います。 確かにこの映画はぶっ飛んでいるんですが、見終わった最後には泣いていました。 死生観、愛、孤独。 人生のテーマとして普遍のものをここまで狂った、それでいてまっすぐに切り取った作品にはしばらく出会っていなかった気がします。 果たしてこの便利な死体は主人公の想像が生んだ存在なのか、あるいはゾンビのようなモンスターなのか、それとも全ては夢なのか、それらが曖昧に描写されていくので、最後までモヤモヤした不安感が根底に漂い続けるのですが、最後にはそれら全てが明確になります。 最後の数分はM・ナイト・シャマランを彷彿とさせるような展開が待っていますが、その描写が恐ろしくも美しくも悲しくもあります。 主人公達の声を使った音楽が全編を通して効果的に使われており、これが無ければ評価はかなり下がっていたのではないかと感じました。 奇抜な難解な設定で意識の高さを押し付けるアート系ではありませんし、かと言って万民受けする作品でも無いと思いますが、少なくとも映画好きなら是非見て欲しい良作だと思います。 主演のポール・ダノは、彼の持つ独特の影をうまく落とし込んだ演技をしていますし、死体を演じるという難しい役柄を演じたダニエル・ラドクリフも、ハリーだけじゃないという凄みを見せてくれます。 小さなお子さんには見せられない描写が多いので、その点はご注意ください。 なんとなく時間潰しに見たのですが、、、 気晴らしに笑える映画を見て笑おう、、と思ってみ始めました。 序盤はアホなやり取りに笑って途中もミュージカル仕立て? くだらなさに笑っていましたが、、、 最期にどんでん返しが。 この映画、とっても深い、 私は主人公ハンクはとても孤独な青年で、 好きな女性に声もかけられない。 そして自殺をしに海にやってきたが、 死ぬ間際に走馬灯すらが見えなかった、、 (冒頭の、「色んなパーティや友人たち、、、」何も出来なかった、って事かと。 ) そこで見つけた死体をメニー(沢山・全てという意味?) と名付けて「万能メニー」のキャラを作り上げて行く。 ついに自分を憧れの彼女に見立て「何でもできるメニー(ハンク)に恋をする」。 (彼女がハンクに恋をする という夢を実現した) 彼女の家のすぐ裏の海で、 夢見た「二人の甘い生活」を送るのです。 (ストーカーですよね(笑)) 彼女を好きだっただけじゃなくて 幸せそうな彼女に憧れを抱いていたのかもしれない のかな?とも感じました。 そして、そんなメニーとの日々の中で、 ハンクは親友(メニー)を守りクマと戦い、自信を付け、 生きがいを見つけ、少し成長したんじゃないかなと。 父親に今まで一度も逆らった事無かったんじゃないかと思いますが、 最期に父に向って「その言葉は止めてくれ!」と言い返して、 父親が驚いた顔を見せます。 そして孤独で内気で思い切った事等出来ない青年ハンクは 最期に自分の身を挺してまで大親友のメニーを助けるという 大胆な行動にでます。 最期のハンクの清々しい表情と 少し満足そうな父の顔、 コメディだったけどとてもヒューマニックな映画でした。 最初の目的と違いましたが、 見て良かったと思いました。 斬新な設定で「死体がスイス・アーミー・ナイフのように、いろんな機能を持つ」奇想天外なお話。 この死体の利用を「笑える」との感想で観進められる人は、良い評価になる作品なのかもしれません。 しかし、死体を自己の利得の為に蹂躙し愚弄するような利用をしている姿は、私には嫌悪感しかない。 いくら孤独で寂しかったからとは言え、屍を持ち歩くこのような行為は、死者に対する敬虔さを著しく欠く粗野な行為です。 死ねばただの肉片でしかないかもしれませんが、どんな理由があったとしてもそれを利用などしてはいけません。 このように死体を屈辱的に利用するのは死者に対しての愚弄であり、冒涜であり、人間の尊厳をないがしろにする行為としか映りません。 本作は、「生きる」って何なんだろうか?自分らしく「生きる」って何なんだろうか?という「生」の探求がテーマだと思いますが、死体を物の如く扱っている姿は「生」の冒涜であり、本末転倒ではないでしょうか。 土葬の文化圏では、死体に対する概念が、ゾンビ映画の氾濫やハロウィンなどからして日本人のそれとは違うのかもしれないので、本作制作に批判はしない だが、火葬文化圏の我が日本人が嫌悪まではないにしても違和感なく観れるものなのだろうか? 内向的な気質の人は、自己肯定感が低く、社会では生きにくいかもしれませんが、それは単に自己の成長の機会を自分自身で止めているのが原因です。 成長とは往々にして苦痛を伴いますが、その苦痛を恐れていては、成長は在り得ません。 恐怖は常に無知から生じますが、知ってしまえば恐るるに足らずなんて事も多いのにやろうともしないからいけないのです。 大体に於いて、人生の唯一の意義は、人のために生きることであって、自分自身にしか気の回らないような未成熟の大人は、社会のお荷物でしかないのです。 社会の規範から外れるが、自分には外れる行為をしたいという欲求がもしあり、抑えることにより抑圧されている感じるのであれば、もうそれは病気です。 治療とそして教育が必要です。 人前で屁をしてはいけないのは、恥かしいからでもありませんし、社会規範でもありません。 他人の嫌がる行為をするかしないを決めるのは人の品性で、道徳心やマナーの問題ではなく、自分の主義です。 自分が惚れてる女性が人妻だとしたら、それでも愛されたいとかやりたいとか思ってしまうのも、素直な欲求とかで片付けられる妄想ではなく、病的な偏執です。 人のものを盗ってはいけないというのは、教わったからでもないし、道徳やマナーや社会規範や法規制からでもありません。 大なり小なりありますが、全てするかしないかは自分の主義です。 こんな事で抑圧されてるだの、生きにくいだの言っている甘ちゃんに私は同情する気もないし、理解しようとする気もないので、本作に共感できる要素は全くありませんでした。 意味不明や、面白くないといった事で低評価なのではありません。 ただ単に奇抜で面白いとか、奇想天外な物語として、何の畏敬の念もなく平気で観進められる人が多いのが信じられません。 事前情報として、ダニエル・ラドクリフの死体と旅する物語ということは知っていました。 またタイトルに負けない程ヒューマンドラマ性の強い作品でもあり、過去誰しもが通るような人生経験について考えさせられる内容で進行していきます。 そして、そんなドラマ性を引き立てる為の伏線が、情報量だけでも本筋に引けを取らない程に散りばめられているのに、最終的にそれらをしっかり回収している点も高評価です。 悪い点: 捉え方によっては「死体のリサイクル」に見えて個人の尊厳に関わる内容のため、人を選ぶ内容であること。 加えて「オナラ」等の下品な表現が頻繁に登場するので、そういった要素に嫌悪感を抱きやすい内容であること。 総評: 観て良かった。 本当にそう感じました! 単純に事象の顛末を追うだけじゃなく、死体を通じて人生を振り返る主人公の物語を楽しむ気持ちでご覧になると良いかもですね。 【ポジティブ思考】 映画「ラースと、その彼女」と映画「ウォームボディーズ」を足したような内容です。 人は不思議で弱い生き物。 愛されて初めて幸福を味わえる。 その幸福を味わった瞬間、私達は生きていると実感できます。 その証として、私達は記憶や写真に思い出を残します。 そして、思い出を共有できるパートナーがいるからこそ、人は強く生きれる。 それが死体であろうが、ロボットであろうが、そこには強い絆が築いていく。 この作品のオナラは、社会の固定観念や偏見に囚われずに、自由に生きろっていうメタファーだと思ってます。 人生がテーマの作品だと思ってます。 【ネガティブ思考】 主人公がキモイ!ダニエル君かわいそう!死体が話す訳ないだろう!オナラきたない! ダラダラしてて退屈!意味わからん!時間の無駄!駄作! 好みはあると思います。 でも奇妙で変わった作品、インディーズ映画が好きな人は見た方がいいと思います。 Youtuber:TheGameSeekersより.

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『ワイルドライフ』映画レビュー「個性派俳優ポールダノの初監督作品は機能不全な田舎家族!?」

ポールダノ 映画

CONTENTS• 映画『Wildlife』の作品情報 【公開】 2018年(アメリカ映画) 【原題】 Wildlife 【監督】 ポール・ダノ 【キャスト】 ジェイク・ジレンホール、キャリー・マリガン、エド・オクセンボウルド、ゾーイ・マーガレット・コレッティ、ビル・キャンプ 【作品概要】 演出は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 2007 で英国アカデミー賞助演男優賞にノミネート、『プリズナーズ』 2013 『それでも夜は明ける』 2013 など、様々な作品でベテラン俳優たちを圧倒するほどの演技を披露している俳優ポール・ダノ。 彼と共に脚本を手がけたのは『ルビー・スパークス』 2012 で共演、ダノの恋人であり2018年に子供を出産した女優、脚本家のゾーイ・カザンです。 主演を飾るのは『複製された男』 2013 『ナイトクローラー』 2014 『ノクターナル・アニマルズ』 2016 などビッグ・バジェットからインディペンデント映画まで数々の秀作に出演するジェイク・ギレンホール。 映画『ワイルドライフ』のあらすじとネタバレ 1960年代のモンタナ州。 少年ジョーは父ジェリー、母ジャネットと3人で包まやしやかながらも穏やかな生活を送っています。 ある日、ジェリーは働いていたゴルフ場から解雇されてしまいました。 酒をのみながら不遇を嘆く父を何とも言えない気持ちで見守る息子ジョー。 妻ジャネットは専業主婦でしたが仕事に戻ることを決め、水泳のインストラクターの仕事を得ます。 ジョーも小さな写真館でアルバイトをすることにします。 ジェリーは昔の職に戻ることを提案されますが彼はプライドからそれを拒否、近くの山であるグレートフォールズで起こっている火災を鎮静させるための職に就くことに決めました。 その職は危険で低賃金、長い間家を空けなければいけません。 ジャネットが止めるのも聞かずジェリーは家を出ました。 ジェリーが家を出、ジャネットはインストラクターとして、ジョーは学校とアルバイトに励む日々を送ります。 仕事が忙しい母に代わり、ジョーが夕食の買い出しに出かけるようにもなりました。 そんなある日ジョーが学校から帰宅すると、家に母と老年のでっぷりした男性がいました。 彼の名前はミラー、会社を営む地元では名前の知られた裕福な人物。 ジョーはミラー氏と母の間になにやら気配を感じ、彼を警戒します。 ジャネットは以前より着飾るようになり、ジョーはそんな母の姿を複雑な気持ちで見つめます。 一度ジョーとジャネットは父ジェリーが働く山の様子を見に行きました。 山は燃え上がり、ジョーは父を心配します。 お父さんに会えるかもしれないよと母に提案しますが、それをはねつけるジャネット。 ある日、学校から帰るとジャネットは美しいドレスの支度をしていました。 今晩ミラー氏の自宅でジョーも一緒にディナーをするといいます。 ジョーも渋々ながらドレスアップした母と一緒に向かうことにしました。 ワインを飲み酔っ払って父以外の男性とダンスをする母、自分を無理やり誘ってダンスする母、今までに見たことのない母の姿に戸惑うジョー。 帰る際、ミラー氏はジョーの目の前でジャネットにキスをし、彼女は泣きながら屋敷を飛び出します。 ジョーと一緒に車に乗り込みますが、借りたコートを返すからと言いジャネットは再びミラー氏の元に戻りました。 なかなか車へ戻ってこない母を心配しジョーが窓からこっそりのぞくと、そこには情熱的にキスを交わすジャネットの姿がありました。 ディナーの後、今度はジョーとジャネットの家に泊まりに来ていたミラー氏。 それを知ってしまったジョーはますます混乱します。 そんな中季節はたち、ジェリーが家に戻ってきました。 ジャネットは夫に「私はこの家を出て行く」と宣言します。 ジェリーはもちろん、それを知らなかったジョーも驚きます。 ジャネットはミラー氏と関係を持ったことを打ち明け、怒り狂ったジェリーは家を飛び出しました。 ジョーは父を追い一緒に酒場に向かいます。 しかしジョーもミラー氏とジャネットの関係を知っていたことを知ったジェリーは、ミラー氏の自宅に向かい玄関に火を放ちました。 呆然とするジョーの前に屋敷から飛び出してきたミラー氏は、他の女性と一緒でした。 ジョーはその場にいられなくなり、呆然と街をさまよった挙句、警察に入りました。 そこに父の姿はありません。 家に帰るとジェリーはすでに帰宅しており、ジャネットと二人で待っていました。 ミラー氏と話し合いこの事件は示談になったといいます。 何が起こってしまったのかわからない。 ジョーは両親に自分の気持ちを打ち明け、自分の部屋にこもりました。 月日は経ち、ジョーは父ジェリーと二人で住んでいます。 ジャネットはオレゴン州に移りましたが、今日は少しだけ二人の元に帰ってくる日。 久しぶりに家族三人で食事をした後、ジョーは両親をある場所へ連れて行きました。 それはずっとバイトをしている写真館。 ジョーは両親を座らせ、自分は真ん中に座ります。 シャッターを切り、彼は家族の写真を自分の手で収めるのでした。 ショットとカメラワーク 本作は 1990年に出版されたリチャード・フォードによる同名小説を原作とした映画化です。 60年代の可愛らしい衣装、彼らの瞳の色とマッチした印象的なブルー、静粛で洗練された映像の中進むのはある平穏な家族がもつれあい壊れていく、徐々に大きくなっていく波のような印象を与える物語です。 『 Wildlife』で注目すべきはショットとカメラワーク。 物語最初、まだジェリーが解雇されておらずジャネットが専業主婦として働いていたころ、夫婦は同じフレームに収まっています。 キッチンで何やら楽しそうに話す両親の姿を見つめるジョー。 しかしジェリーが失業してからは、カメラは ジェリーとジャネットをバラバラのショットで映し、彼らの心が分断されてしまったことを表します。 ジェリーが去った後、カメラはジョーの視点代わりとして多く機能するようになり、 だんだんと母が変わっていく姿を見つめる不安な息子の心情が強調されます。 ジョーを映す際のカメラワークは彼がフレームに入る前、出た後もその空間を長く映し出す、ネオリアリズモ映画の特徴すら感じさせます。 最後の食卓のシーン、カメラは最初テーブルを囲む3人を一つにフレームに、そしてジェリー、ジャネット、ジョー1人1人を映してゆきます。 自然で発生した火を鎮静させる仕事をしていたジェリーが、自分の手で小さくも火を起こしてしまう。 キャリー・マリガンの演技力 本作で特筆すべきは、今回母親、妻、夫がいない期間に他の男性と関係を持つ ジャネットという役を演じたキャリー・マリガン。 ミラー氏の自宅でディナーをするシーン、真っ赤なリップをつけ新緑色のドレスに身を包んだマリガンは美しくも、すぐに崩れ落ちてしまいそうな脆さ、やり場のない怒りを秘めひどく不安定。 ジェイク・ギレンホールもアルコール依存を匂わせる自暴自棄気味の男性。 本作で 監督デビューを飾ったポール・ダノ。 今後も彼の俳優活動はもちろん、映画監督としての活動も見逃せません。

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ポール・ダノ初監督映画『ワイルドライフ』あらすじネタバレと感想。ジェイク・ジレンホール&キャリー・マリガン共演の秀作とは

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今回取り組んだのは、19歳で天才作家として華々しくデビューしながらも、その後10年間ベストセラーを書けずに悶々とし続けているカルヴィンと、彼が小説のヒロインとして描き始めたものの、なぜか現実世界に飛び出してきてしまったキュートなルビーとの、ちょと風変わりで、ちょっと切ない恋物語。 始めは自分が変になってしまったのだと驚くカルヴィンだが、ほかの人にもルビーが見えることに気づく。 やがて自分が小説を書き進めるたびに、ルビーを意のままに操れることを知ったことから、カルヴィンは何もコントロールせず2人の関係を自然にまかせるべきかどうかで葛藤するというストーリーだ。 2006年、『リトル・ミス・サンシャイン』で世界中を魅了し、アカデミー賞を沸かせたジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスの夫婦監督コンビが、6年ぶりに待望の新作を発表した。 今回取り組んだのは、19歳で天才作家として華々しくデビューしながらも、その後10年間ベストセラーを書けずに悶々とし続けているカルヴィンと、彼が小説のヒロインとして描き始めたものの、なぜか現実世界に飛び出してきてしまったキュートなルビーとの、ちょと風変わりで、ちょっと切ない恋物語。 始めは自分が変になってしまったのだと驚くカルヴィンだが、ほかの人にもルビーが見えることに気づく。 やがて自分が小説を書き進めるたびに、ルビーを意のままに操れることを知ったことから、カルヴィンは何もコントロールせず2人の関係を自然にまかせるべきかどうかで葛藤するというストーリーだ。 ファリス監督は、「映画は質問を投げかけているわ。 もしも自分が愛する人を変えられるとしたら、人はそういう誘惑に耐えられるかどうか? 仕事とか人間関係とかをコントロールできるという誘惑を見せて、そういう支配によって自分が愛するものが壊されてしまうことを描いているのよ」と話す。 つまり、カルヴィンが経験することは、実際の恋愛関係についてのメタファーとも言えるのだ。 実は、物語だけでなくこの作品にユニークさを添えているのが、主演を務めている2人。 カルヴィン役を演じるのはポール・ダノ、ルビー役を演じるのはゾーイ・カザン。 2人は、アメリカのエンターテインメント界注目の若手カップルで、私生活でも恋愛関係にある。 そして、本作の脚本は、ゾーイが手がけたものだ。 ゾーイはポールのためにカルヴィンというキャラクターを書いたのだという。 「そう、ゾーイは僕の恋人だ。 彼女はブルックリンにある僕たちのアパートのカウチに座って、このを書いた。 僕らはとても運が良かった。 10ページを書き終える頃には、『これを書き終えたら、ジョン(デイトン)とヴァレリー(ファリス)に送るべきだよ』と言ったんだ。 あの2人はこの映画の監督としてぴったりだと思ったし、以前に仕事()で組んで知っていたからね。 でも、本作であの2人と組むというのは夢にすぎなかった。 本当に実現するなんて思いもしなかった。 だから、こうしてこの映画を作ってこのセットにいられて、とんでもなくラッキーだと思っている」。 「ゾーイが書いている間、邪魔をしたという点では脚本執筆に手を貸したと言えるかも」と笑うポール。 役と自分との共通点があるかどうかについては、「さあ、どうかな」と首をひねる。 「運良く、ゾーイはとても才能のあるライターで、あの役に僕の性格の一部を使ったし、長所もいくつか取り入れた。 僕の性格が多少、反映されているか? たぶん、そうなんだろうと思う。 恐らく、カルヴィンには僕が気づいていない部分が組み込まれているんだろうな。 おかしなことだよね。 役者というのは、どんな役でもできるだけ自分を生かそうとするけれど、同時に本当の自分からは思いっきり距離を置こうとするんだから」。 実生活でも恋人のゾーイと、恋人役での共演というのがとても気に入っているというポール。 ゾーイも同じ意見のようだ。 ポールと一緒に演じるのはとてもやりやすいわ。 彼はすばらしい人でとてもいい役者だけど、この映画を作るのは、ある意味、とても大変だった。 私たちは仕事場と家を一緒に往復して、毎日14時間一緒だった。 一緒に多くの時間を過ごしたけれど、それは恋人だからではなくて映画のためだった。 あの状態は、赤ちゃんが生まれたばかりの状態にちょっと似ているような気がする。 睡眠時間が足りないって意味でね。 いつも映画の世話をしていなければならないから。 私たちは、いままで一度も口ゲンカをしたことのないようなことでモメたわ。 車の中で聞く音楽のこととかね(笑)」。 脚本の執筆も行ったゾーイは、ピグマリオン神話からインスピレーションを得たというこのユニークなストーリーの主人公を、ポールに演じてもらいたいと早い段階から考えていたという。 「私は、すぐに満足を手にしたいタイプなの(笑)。 舞台で演じているせいで身についた悪い癖ね。 舞台では人々の反応をすぐ耳にしているから。 脚本を書いたら、いつもポールに見せているわ。 仕事に疲れて帰ってきた彼に、『すぐにこれを読んで!』と言ってね。 実際、そうしたの。 ある朝、最初の5ページを急いで書いて、ポールに向って、『これ、いいと思うわ』と言ったの。 彼はそれを読んで、『僕たちのために書いているんだね』と言ったわ。 そんなこと考えていなかったんだけど、そう言われて『もちろん、そういうことよ』と答えた。 私はカルヴィンの姿を、痩せていて背が高く、メガネをかけていると書いた。 明らかに、ポールのことを書いていたのね。 それで、残りの部分は、ポールをカルヴィン役に考えながら書き上げたわ」。 そんなゾーイが興味を持つのは、人間関係はどう変わっていくのかということだとか。 「2人が付き合いだしたときというのは、最初の1、2年は強制的な考えに囚われると思う。 それから少し時間が経つと、そういう強制的な感覚が薄れる。 その次に来るのは選択。 あなたを裏切らないこと、あなたを愛することを選んだ。 強制と選択は正反対のもので、本作では一部で、それについて描いている。 冒頭では、全てが強制の話だけど、ルビーとカルヴィンが付き合い始めると、突然、今度は選択の話になる。 彼はそういう考えに怯えて、普通ならやらないかもしれないことをやってしまう。 不安に襲われる状況に陥ると、極端なことをやる人は大勢いると思うわ。 愛を失うことの恐怖はとても大きいから」。 そんな恋人同士のリアルな感情を表現した本作で、夫婦、恋人同士という親密な関係にあるクリエイティブな4人が現場に集まったことについては「そのおかげで映画製作のプロセスでもっと協力し合うことができたわ」とゾーイは話す。 「私たちはとてもオープンに話し合いをして、全員が参加した。 ジョナサンとヴァレリーの関係や、2人の仕事ぶりを見ていると、どうしてああいうふうにできるのか分からない。 2人には独特の魔法があるみたい。 お互いに支え合っているから、相手の考えていることが全部分かるの。 20年後に、ポールとあんなふうに仕事ができたら、とても嬉しいわ」。 まさに、現実とフィクションが交差する。 面白くないはずない! 《text:June Makiguchi》.

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