百人一首 作者。 百人一首の有名な代表作和歌20首!藤原定家選の小倉百人一首について

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百人一首 作者

「百人一首」とは、百人の歌人の和歌を、一人一首ずつ選んだもので、一般的には1235年頃、藤原定家によって編纂された『小倉百人一首』のことを指します。 『小倉百人一首』と呼ばれるのは、定家がこれを編纂した場所が京都府嵯峨野にある小倉山の麓であったからと伝えられています。 定家は、親しい人に頼まれ、山荘のふすまに飾るためにと、百人の歌人の歌を一首ずつ色紙にしました。 これが今に残る「百人一首」のもとになったと言われています。 百人一首は、 全て勅撰和歌集(天皇や上皇の命によって作られた歌集)から選ばれ、奈良時代から鎌倉時代初めまでの和歌が、ほぼ時代順に配列されているのが特徴です。 次に、 部立(ぶだて・歌のカテゴリー)をみていくと、 「恋」43首、「春」6首、「夏」4首、「秋」16首、「冬」6首、「離別」1首、「羈旅(きりょ・旅情を詠んだもの)」4首、そして、これらの部立に属しないものを「雑(ぞう)」の歌が20首あります。 (また、 雑の中でも秋の季節が詠み込まれているものとして「雑秋」の歌が1首あります。 ) 恋の歌が大半を占め、四季の中では秋が最も多く収められていることが分かりますね。 今回は、「百人一首」を一首ずつ紹介していきます。 そして、誰もがお正月や学校の授業で一度はやったことがある「百人一首のカルタ取り」の遊び方とルールを説明していきたいと思います。 関連: 百人一首のルール解説 「百人一首カルタ」の遊び方とルールを紹介する前に、少し和歌の基本を解説したいと思います。 和歌は、五・七・五・七・七の三十一文字(みそひともじ)で表現される短い詩で、一首(いっしゅ)、二首(しゅ)と数えます。 また、最初の五・七・五までの部分を「上(かみ)の句」そして、残りの七・七の部分を「下(しも)の句」と言うことをおさえておきましょう。 では、1つ例を挙げてみていきましょう。 例:「春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」 この和歌では、「春すぎて 夏来にけらし 白妙の」までが「上の句」、「衣ほすてふ 天の香具山」が「下の句」となりますね。 次に、「百人一首カルタ」についてですが、カルタには 「絵札(読み札)」と「字札(取り札)」がそれぞれ百枚ずつあります。 絵札には和歌が一首書いてあり、読む人はそれを見ながら読み上げます。 一方、字札には、和歌の下の句だけが書いてあり、取る人はそれを取っていくというのが基本的なルールになります。 「百人一首カルタ」の遊び方 「百人一首カルタ」の遊び方を見ていきましょう。 〈ちらし取り〉 各個人で競い合う、最も一般的なカルタ遊びです。 【人数】 人数は何人でもかまいません。 一番多く取った人の勝ちです。 〈源平合戦〉 源氏と平氏の2つのチームに分かれて競い合う団体戦です。 【人数】 源氏と平氏の2チームでそれぞれ人数を揃えます。 ただし、相手チームにある取り札をとった場合は、自分のチームの取り札を相手に渡します。 〈坊主めくり〉 絵札(読み札)だけを使う遊び方で、和歌を知らなくても気軽に楽しめます。 【人数】 二人以上なら何人でもいいです。 そして、その札は次にお姫様が詠んだ歌の札を引いた人のものになります。 最後まで勝ち負けが分からない、そして逆転勝利もありうるゲームです。 下の句を読んで、下の句の札を取るのでこの名前がつきました。 また、木札(木製カルタ)であり、くずし字で書かれていることも特徴です。 【人数】 三対三のチーム(源氏と平氏に別れます)戦です。 相手の札を 取った場合は、自分のチームから一枚相手に渡します。 現在、競技カルタ大会は全国で年間約50を数え、毎年1月には名人戦、クイーン戦が開かれ、男女の日本一が決まります。 その速さ、激しさから「たたみの上の格闘技」とも言われています。 それが各自の持ち札になります。 相手の陣地(敵陣)にも同じように二十五枚並べられている状態になります。 しかし、読み手は百枚読むので、使わない札は空札となります。 十五分経つと競技が開始します。 自陣の札を取った時はそのままですが、敵陣の札を取った時は、自陣の札からすきなものを一枚相手に送ることができます。 「百人一首」一覧とその意味、人気のうた ここからは、百人一首の歌を紹介します。 百人一首の和歌は歌番号( 和歌番号)の順になっています。 それぞれの作者と意味、そしてどの部立(カテゴリー)に属しているか記しました。 夏になると真っ白な着物をほすという天の香具山に、真っ白い夏の着物がほしてあることだよ。 畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)とともに大和三山と言われ、昔から神の山として信仰されてきました。 3.『足引きの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ(ん)』 作者:柿本人麻呂 部立:恋 意味:山鳥の長くたれさがった尾のような、長い長い秋の夜。 私は恋しい人と離れて、たった一人、寂しく寝ることであろうか。 4.『田子の浦に うち出(い)でてみれば 白妙の ふじの高嶺に 雪はふりつつ』 作者:山部赤人 部立:冬 意味:田子の浦の長めのよいところに進み出て遥か彼方を見渡すと、あの白い富士山の山頂に今、雪が降り続いている。 5. 『奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき』 作者:猿丸大夫 部立:秋 意味:人里離れた寂しい山の中で、紅葉を踏み分けて鹿が鳴いている。 その声を聞く時こそまさに、秋の寂しさが心にしみて悲しく感じられたことだよ。 6.『かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける』 作者:中納言家持 部立:冬 意味:かささぎ(カラス科の鳥)の群れが翼を広げて橋をかけたという言い伝えがある天の川。 その橋がまるで霜が降りたかのように真っ白に見えることから考えると、もうずいぶん夜も更けてしまったことだなあ。 7.『天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に出(い)でし月かも』 作者:阿倍仲麻呂 部立:羈旅 意味:大空をはるかに仰ぐと、美しい月が出ている。 ああ、ふるさと春日の三笠山で見たあの懐かしい月がのぼっているよ。 「三笠の山」は、そこにある山で、ふもとに春日大社があります。 8.『わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり』 作者:喜撰法師 部立:雑 意味:私の住む小屋は都の東南にあり、このように心やすらかに暮らしている。 それなのに世間の人は、私が住みづらい世の中をのがれて、宇治山に隠れ住んでいるといっているそうだ。 むなしくわが身に 降る長雨を眺めて暮らし、物思いに沈んでいるうちに。 10.『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』 作者:蝉丸 部立:雑 意味:これがまあ、東国へ行く人も都に帰る人も、前から知っている人もまだ知らない人も、みんなここで別れ、ここで出会うと言う有名な逢坂の関所なのだなあ。 11.『わたの原 八十島かけて こぎ出(い)でぬと 人には告げよ 海人の釣舟』 作者:参議篁 部立:羈旅 意味:大海原に浮かぶ数多くの島々をめざして、私を乗せた舟はこぎだしていったと、どうか都にいる恋しい人にだけは伝えておくれ、そこの漁師のつり舟よ。 「八十島かけて」は、島から島へと巡っていくことを表現しています。 12.『天(あま)つ風 雲のかよひ(い)路 吹きとぢよ 乙女のすがた しばしとどめむ(ん)』 作者:僧正遍照 部立:雑 意味:空を吹く風よ、雲の中にあるという、天と地を結ぶ通路を閉ざしておくれ。 この美しく舞う天女たちの姿を、もうしばらく、ここにひきとめておきたいから。 その翌日に開かれた豊明節会(とよのあかりのせちえ)という宴で披露された「五節の舞姫」の美しさに感動してこの歌は詠まれたと言われています。 13.『筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがわ) 恋ぞつもりて 淵となりぬる』 作者:陽成院 部立:恋 意味:筑波山の峰から流れ落ちるみなの川は、次第に水かさを増して、深い淵になります。 それと同じように、あなたを思う私の恋心も積もり積もって、今では深い思いの淵のようになってしまいました。 こうなったのは誰のせいでもない、あなたのせいなのですよ。 春の七草が代表的なものです。 16.『立ち別れ いなばの山の 峰に生(お)ふる まつとし聞かば 今かへりこむ(ん)』 作者:中納言行平 部立:離別 意味:私はこれから因幡(いなば)の国に行きますが、行く先の稲羽山の峰に生えている松のように、皆さんが私を待っていると聞いたら、すぐにでも帰ってきましょう。 竜田川に紅葉が散り敷いて、流れる水を鮮やかな紅色にくくり染めにするなどということは。 勢いが激しいという意味で「神」また地名「宇治」にかかる。 のちには「ちはやふる」とも。 18.『住(すみ)の江の 岸による波 よるさへ(え)や 夢の通ひ(い)路 人目よくらむ』 作者:藤原敏行朝臣 部立:恋 意味:住の江の岸に寄る波の「よる」という言葉ではありませんが、昼の現実の世界はともかく、なぜ夜の夢の中の通い路さえ、あなたは人目を避けようとするのでしょうか。 住吉神社(住吉大社)と海岸松が有名でよく和歌に詠み込まれる歌枕となっています。 19.『難波潟(なにわがた) みじかき蘆(あし)の ふしの間も 逢は(わ)でこの世を 過ぐしてよとや』 作者:伊勢 部立:恋 意味:難波潟に生えている蘆の節と節の間のような、ほんの短い時間でもお逢いしたいのです。 それなのにそれさえも叶わず、この一生を過ごせとおっしゃるのですか。 20.『わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢は(わ)む(ん)とぞ思ふ(う)』 作者:元良(もとよし)親王 部立:恋 意味:あなたとのうわさでこんなにも悩み苦しんでいるのだから、今はもう身を捨てたも同じこと。 いっそ難波の海にある澪標(みおつくし)のように、この身をほろぼしてもいいから、あなたに逢いたいと思います。 21.『今来む(ん)と 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出(い)でつるかな』 作者:素性法師(そせいほうし) 部立:恋 意味:あなたが「今にも行こう」とおっしゃったばかりに、私は九月の長い夜をずっとあなたを待ちつづけ、とうとう有明の月が出るのを待つことになってしまいました。 22.『吹くからに 秋の草木の しを(お)るれば むべ山風を 嵐と言ふらむ』 作者:文屋康秀(ふんやのやすひで) 部立:秋 意味:山から風が吹くと、たちまち秋の草木がしおれてしまう。 なるほど、それで山から吹きおろす風を「嵐」と言うのだなあ。 23.『月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど』 作者:大江千里(おおえのちさと) 部立:秋 意味:月を見ていると、心が様々な思いに乱れてかぎりなく物悲しくなってくる。 私ひとりのためにやってきた秋ではないのだろうけれど。 24.『このたびは ぬさも取りあへ(え)ず 手向山(たむけやま) 紅葉の錦 神のまにまに』 作者:菅家(かんけ・菅原道真を尊敬した呼び方) 部立:羈旅 意味:今回の旅は、急な旅立ちでしたので、幣(ぬき)の用意もできませんでした。 かわりに手向山(たむけやま)の錦のように美しい紅葉を、幣としてお供えします。 神よ、どうか、御心のままにお受け取りください。 25.『名にしおは(わ)ば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな』 作者:三条右大臣 部立:恋 意味:「逢って一緒に寝る」という名前を持つ逢坂山のさねかずらよ。 その名の通りなら、さねかずらの蔓をたぐるように、人に知られないでこっそりあなたのもとへ通う方法があればよいのになあ。 26.『小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ』 作者:貞信公 部立:雑秋 意味:小倉山の峰を彩るもみじ葉よ、もしお前に心があるのならば、もう一度、天皇がおいでになるはずだから、それまで散らないで待っていて欲しいものだ。 27.『みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ』 作者:中納言兼輔 部立:恋 意味:みかの原を分けるように湧き出て流れる「いづみ川」。 その「いつみ」という言葉のように、いつ見たというわけでもないのに、どうしてこんなにあなたが恋しく思われるのでしょうか。 28.『山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へ(え)ば』 作者:源宗于朝臣 部立:冬 意味:山の中にある村は、いつも寂しいものだが、特に冬になると寂しさが増してくるものだ。 人の訪れも途絶え、あたりの草も枯れてしまうと思うと。 29.『心あてに 折らばや折らむ(ん) 初霜の 置きまどは(わ)せる 白菊の花』 作者:凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 部立:秋 意味:当てずっぽうに、折るなら折ってみようか。 初霜が一面に降って区別がつきにくくなっている白菊の花を。 30.『有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし』 作者:壬生忠岑(みぶのただみね) 部立:恋 意味:あなたとお別れした暁の空に、有明の月がそっけなく残っていました。 それからというもの、夜明け方ほど辛く悲しく思われるものはありません。 31.『朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪』 作者:坂上是則 部立:冬 意味:夜がほのぼのと明けるころ、辺りを見渡すと、まだ残っている明け方の月ではないかと思ってしまう程に、吉野の里に降り積もっている白雪よ。 春は桜、冬は雪の名所と詠われました。 32.『山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり』 作者:春道列樹 部立:秋 意味:山の間を流れる川に、風がかけ渡した柵があった。 いったいどんなものかと思ったら、それは流れることができないでたまっている紅葉であったよ。 34.『誰をかも 知る人にせむ(ん) 高砂の 松も昔の 友ならなくに』 作者:藤原興風 部立:雑 意味:年老いた私は、いったい誰を友とすればよいのだろうか。 あの長生きで有名な高砂の松でさえも、昔からの友人ではないのだから。 35.『人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香(か)に匂ひける』 作者:紀貫之 部立:春 意味:人の心は変わりやすいものですから、あなたの心は昔と同じままかどうか分かりません。 しかし、懐かしいこの里の梅の花だけは、昔のままの香りで咲き匂っていますね。 36.『夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ(ん)』 作者:清原深養父 部立:夏 意味:夏の夜は短く、まだ宵のくちと思っている間に明けてしまった。 沈みそびれた月は今ごろ、雲のどのあたりに宿っているのであろうか。 37.『白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける』 作者:文屋康秀 部立:秋 意味:草葉に白露がおりている秋の野原に風が吹きつけて、露が飛び散る。 それはまるで、糸で繋ぎとめていない真珠が散り乱れるようだなあ。 38.『忘らるる 身をば思は(わ)ず 誓ひ(い)てし 人の命の 惜しくもあるかな』 作者:右近 部立:恋 意味:あなたに忘れられてしまう我が身のことはなんとも思いません。 ただ、私への愛を神に誓ったあなたが、誓いをやぶったために神様から罰を受けて亡くなってしまうのではと、惜しまれてならないのです。 39.『浅茅生(あさじう)の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき』 作者:参議等 部立:恋 意味:まばらに茅(ちがや)が生えている小野の篠原の「しの」という名のように、私は、あの人への思いをじっと耐えしのんできたが、もうしのびきれない。 どうしてこんなに、あの人が恋しいのだろうか。 40.『忍ぶれど 色に出(い)でにけり わが恋は 物や思ふ(う)と 人の問ふまで』 作者:平兼盛 部立:恋 意味:誰にも知られないように、心に秘めていたのに、とうとう顔色に出てしまったなあ、私の恋は。 何かもの思いをしているのですかと人が尋ねるほどに。 41.『恋すてふ(ちょう) わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか』 作者:壬生忠見 部立:恋 意味:私が恋をしているという噂は、早くも世間に広まってしまったことだ。 誰にも知られないように、ひそかに私の心のうちだけであの人を思いはじめたばかりなのに。 42.『契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは』 作者:清原元輔 部立:恋 意味:私たちは、かたく約束しましたよね。 互いに涙にぬれた袖を何度もしぼりながら、あの末の松山をけっして海の波がこすことがないように、二人の仲はどんなことがあっても心変わりするまいと。 それなのにずいぶんな変わりようですよ。 43.『逢ひ(い)見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり』 作者:権中納言敦忠 部立:恋 意味:こうしてあなたと逢って夜を過ごしたあとのこの切ない心に比べると、逢う前のあなたを恋しく思っていた気持ちなどは、ものの数に入らないようなものだったということが分かりましたよ。 44.『逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし』 作者:中納言朝忠 部立:恋 意味:もしあの人と愛し合うことが全くなかったなら、あの人の冷たさや、わが身の辛さを恨んだりすることもなかっただろうに。 45.『哀れとも いふべき人は 思ほ(お)えで 身のいたづらに なりぬべきかな』 作者:謙徳公 部立:恋 意味:「ああ、かわいそうに」と言ってくれそうな人は、誰ひとり思い浮かばない。 私はきっとこのままあの人への恋に苦しみながら、むなしく死んでしまうのだろうなあ。 46.『由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え 行くへ(え)も知らぬ 恋の道かな』 作者:曾禰好忠 部立:恋 意味:由良の瀬戸をこぎ渡る舟人が、かじをなくしてただようように、この先どうなっていくのか行方もわからない、私の恋の道だなあ。 47.『八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり』 作者:恵慶法師 部立:秋 意味:いく重にもむぐらが生い茂ったこのさびしい家に、誰ひとり訪ねてくる人もないが、秋だけはやってきてくれたのだなあ。 48.『風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふ(う)ころかな』 作者:源重之 部立:恋 意味:風が激しいので、岩にうちつける波が自分だけくだけ散ってしまう。 それと同じように、あの人が冷たいので、私だけが心もくだけるほどにもの思いに悩んでいるこの頃ですよ。 49.『みかき守(も)り 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ』 作者:大中臣能宣朝臣 部立:恋 意味:宮中の門を守る兵士たちの炊くかがり火は、夜は赤々と燃え上がり、昼になると消えてしまう。 それと同じように、私の恋心も、夜になれば激しく燃え、昼になると消えるように深い物思いにしずんでいる。 51.『かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを』 作者:藤原実方朝臣 部立:恋 意味:こんなにあなたを恋しく思っていることさえ言えないでいます。 言えないから、あなたはそうとも知らないでしょうね。 ちょうど伊吹山のさし草が燃えるように激しい私の思いを。 52.『明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ(お)恨めしき 朝ぼらけかな』 作者:藤原道信朝臣 部立:恋 意味:夜が明けるとやがて日が暮れ、そしてまたあなたに会える夜が来ると分かっているのに、やはり恨めしい夜明けです。 きっとご存じないでしょうね。 54.『忘れじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな』 作者:儀同三司母 部立:恋 意味:あなたが「いつまでも忘れないよ」とおっしゃるそのお言葉を、これから先もずっと変わらないとはとても信じられません。 ですから、私はそうおっしゃってくださる今日を最後に死んでしまいたいものです。 55.『滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ(お)聞こえけれ』 作者:大納言公任 部立:雑 意味:この滝の流れが絶えて水の音が聞こえなくなってから、ずいぶん長い月日が過ぎた。 だが、その名高い評判だけは、流れ伝わって、今でもなお聞こえていることだ。 56.『あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふ(う)こともがな』 作者:和泉式部 部立:恋 意味:私は病気のために間もなく死んでこの世からいなくなってしまうでしょう。 ですから、あの世へ行ってからの思い出に、せめてもう一度あなたにお逢いしたいのです。 57.『めぐりあひ(い)て 見しやそれとも 分かぬ間に 雲がくれにし 夜半(よわ)の月かな』 作者:紫式部 部立:雑 意味:久しぶりに巡り会って、それかどうかも見分けがつかないうちに、雲にかくれてしまった夜中の月。 その月のように、あなただと見分ける間もないほど、あわただしくあなたは帰ってしまいましたね。 58.『有馬山 猪名(いな)の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする』 作者:大弐三位 部立:恋 意味:有馬山の近くの猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音を立てます。 そう、それですよ。 風になびく笹のように頼りないのはあなたの心の方で、どうして私があなたを忘れましょうか。 決して忘れません。 59.『やすらは(わ)で 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな』 作者:赤染衛門 部立:恋 意味:あなたが来てはくださらないものと分かっていれば、ためらうこともなく寝てしまったでしょうに。 来るとおっしゃるから、あなたをずっとお待ちして、とうとう西の山に沈もうとする月を見てしまったことですよ。 60.『大江山 いく野の道の 遠ほ(お)ければ まだふみもみず 天の橋立』 作者:小式部内侍 部立:雑 意味:大江山をこえ生野を通っていく道は、都から遠いので、まだ天橋立の地は踏んでみたこともありません。 それに、そこで暮らす母からの文も見ていません。 和泉式部が丹後国(京都府北部)にいた時に、都で歌合せがあり、藤原定頼から「お母さんに代作を頼んだのでしょうか」とからかわれたことから、この歌を詠んだと言われています。 61.『いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ(きょう)九重に にほ(お)ひ(い)ぬるかな』 作者:伊勢大輔 部立:春 意味:その昔、はなやかに栄えていた奈良の都で咲いていた八重桜。 今日はその八重桜がこの宮中で、美しく咲き誇っていることですよ。 62.『夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ』 作者:清少納言 部立:雑 意味:夜明け前に、にわとりの鳴き声をまねしてだまそうとしても、あの函谷関ならともかく、あなたと私の間の逢坂の関は、決して通ることを許しませんよ。 )をふまえた歌です。 63.『今はただ 思ひ(い)絶えなむ とばかりを 人づてならで いふ(う)よしもがな』 作者:左京大夫道雅 部立:恋 意味:逢えなくなった今となっては、諦めてしまおう。 そのことだけを、せめて人づてでなく、直接お目にかかって、お話しする方法があってほしいものです。 64.『朝ぼらけ 宇治のかはぎり たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木』 作者:権中納言定頼 意味:冬の夜がほのぼの明けるころ、宇治川(京都の宇治川)に立ちこめていた霧がとぎれとぎれに現れてくる。 その絶え間から浅瀬にしかけられた網代木が次々と現れてくることだ。 65.『恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ』 作者:相模 部立:恋 意味:あなたの冷たさを恨み、悲しい思いで流す涙にぬれて、かわく間もない袖が、やがて朽ちてしまうことさえ切なく、くやしい。 その上、この恋のために、私の評判まで廃れてしまうのは、本当に残念なことですよ。 66.もろともに あは(わ)れと思へ(え) 山桜 花よりほかに 知る人もなし』 作者:前大僧正行尊 部立:雑 意味:私がおまえを懐かしく思うように、おまえもまた、私を懐かしく思っておくれ。 山桜よ。 こんな山奥では花のおまえの他に、私の心を知る人は誰もいないのだから。 67.『春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひ(い)なく立たむ 名こそ惜しけれ』 作者:周防内侍 部立:雑 意味:春の夜のはかない夢のようなたわむれの手枕のために、つまらないうわさを立てられるでしょう。 それが、私には残念でたまらないのです。 68.心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな』 作者:三条院 部立:雑 意味:心ならずも、この辛い世に生きながらえていたなら、きっと恋しく思い出すのだろうなあ。 今こうして眺めている、今夜の月のこの美しい月を。 69.『嵐吹く 三室の山の もみじ葉は 竜田の川の 錦なりけり』 作者:能因法師 部立:秋 意味:激しい風が吹く三室山のもみじの葉は、川面一面に散りしいて流れていく。 その様子は、竜田川の錦織のように美しいことだなあ。 70.『さびしさに 宿を立ち出(い)でて ながむれば いづくもおなじ 秋の夕暮』 作者:良暹法師 部立:秋 意味:あまりの寂しさにたえかねて、庵を出て辺りを眺め渡してみた。 すると、どこもかしこも同じなのだなあ。 この秋の夕暮れの寂しさは。 71.『夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆(あし)のまろやに 秋風ぞふく』 作者:大納言経信 部立:秋 意味:夕方になると、家の前にある田の稲の葉に秋風がおとずれて、そよそよと音を立てる。 その秋風が、蘆ぶきのそまつなこの家にも、寂しく吹いてくることだ。 72.『音に聞く 髙師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ』 作者:祐子内親王家紀伊 部立:恋 意味:うわさに高い高師の浜の、きまぐれに立つ波のように、浮気で有名なあなたのお言葉は、心にかけますまい。 うっかり心にかけたら、あとで涙で袖をぬらすことになるでしょうから。 73.『高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山(とやま)の霞 立たずもあらなむ』 作者:権中納言匡房 部立:春 意味:遥か遠く高い山の峰の桜が咲いたことだなあ。 人里に近い山の霞よ、せっかくのこの桜を隠さないように、どうか立たないでおくれ。 峰のことです。 「深山(みやま)」に対する語です。 74.『憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを』 作者:源俊頼朝臣 部立:恋 意味:冷たかった人が、私になびいてくれるようにと、初瀬の観音にお祈りをした。 だが、初瀬の山おろしよ、あの人の冷たさが、おまえのように激しくなるようにとは、祈らなかったのになあ。 75.『契りおきし させもが露を 命にて あは(わ)れ今年の 秋もいぬめり』 作者:藤原基俊 部立:雑 意味:あなたが約束してくださったありがたいお言葉を、命のように大切にしてきましたが、ああその願いもむなしく、今年の秋も過ぎていくようです。 76.『わたの原 こぎ出(い)でて見れば 久方の 雲居にまがふ(う) 沖つ白波』 作者:法性寺入道前関白太政大臣 部立:雑 意味:広々とした海に舟をこぎ出して、遥か彼方を見渡してみると、雲かと見間違えるばかりに、沖の白波が立っていることだよ。 それと同じように、たとえ今は恋しい人と別れても、また必ず逢おうと思う。 78.『淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守』 作者:源兼昌 部立:冬 意味:淡路島から海を飛び通ってくる千鳥の物悲しい鳴き声のために、幾度目を覚ましてしまっただろうか。 須磨の関の番人は。 79.『秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出(い)づる月の 影のさやけさ』 作者:左京大夫顕輔 部立:秋 意味:秋風によって雲がたなびき、その絶え間から漏れ出てくる月の光が、何とまあ明るく、澄み切っていることだろう。 80.『長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ』 作者:待賢門院堀河 部立:恋 意味:あなたのお心が、いつまでも変わらないかどうかも分かりません。 あなたとお別れした今朝は、この黒髪が乱れているように、私の心も恋のもの思いに乱れています。 81.『ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる』 作者:後徳大寺左大臣 部立:夏 意味:ほととぎすが鳴いたので、その方向を眺めると、ほととぎすの姿はなく、夜明けの空にただ有明の月がひっそり残っているばかりであるよ。 82.『思ひ(い)わび さても命は あるものを 憂きに堪へ(え)ぬは 涙なりけり』 作者:道因法師 部立:恋 意味:つれない人を思い、嘆き悲しんでいるけれど、それでも死にもしないで、命は長らえている。 それなのに、辛さにたえきれないで、流れ落ちるのは涙であることよ。 83.『世の中よ 道こそなけれ 思ひ(い)入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる』 作者:皇太后宮大夫俊成 部立:雑 意味:ああ、世の中というものは、辛いことから逃れる道がないのだなあ。 辛さから逃れようと、深く思いつめて入ってきたこの山奥でも、鹿が悲しげに鳴いているのが聞こえる。 84.『長らへ(え)ば またこのごろや しのばれむ(ん) 憂しと見し世ぞ 今は恋しき』 作者:藤原清輔朝臣 部立:雑 意味:これから先、生きながらえていけば、辛いと思っている今のことが、いつか懐かしく思い出されるのだろうか。 かつては辛いと思った昔のことが、今では懐かしく思われるのだから。 85.『夜もすがら 物思ふ(う)ころは 明けやらぬ 閨(ねや)のひまさへ(え)つれなかりけり』 作者:俊恵法師 部立:恋 意味:一晩中、恋人の冷たさを恨み、思い悩んでいるこの頃は、いつまでも夜が明けず、朝の光がさしこまない寝室の戸の隙間までが、無情に思えてしまうことですよ。 86.『嘆けとて 月やは物を 思は(わ)する かこち顔(がほ)なる わが涙かな』 西行法師 部立:恋 意味:嘆けと言って月が私にもの思いをさせるのだろうか。 いや、そうではない。 本当の恋の思いのためなのに、まるで月のせいとばかりに、流れる私の涙であるよ。 87.『村雨の 露もまだ干ぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ』 作者:寂蓮法師 部立:秋 意味:通り雨が宿した露のしずくも、まだ乾ききらない杉や檜の葉に、もう霧が立ち上っている。 何と物寂しい秋の夕暮れであるよ。 88.『難波江の 蘆(あし)のかりねの ひとよゆゑ(え) みをつくしてや 恋わたるべき』 作者:皇嘉門院別当 部立:恋 意味:難波の入り江に生えている葦の、かり根のひと節のような、短い旅のひと夜の恋。 そのひと夜の恋のために、みおつくしのように、我が身をつくして、あなたを恋つづけることになるのでしょうか。 89.『玉の緒よ 絶なば絶えね ながらへ(え)ば 忍ぶることの 弱りもぞする』 作者:式子内親王 部立:恋 意味:私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。 このまま生きながらえていると、たえ忍ぶ力が弱くなってしまい、自分ひとりの心に秘めている思いが、外に表れてしまいそうだから。 90.『見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかは(わ)らず』 作者:殷富門院大輔 部立:恋 意味:あなたに恋い焦がれて流す涙で色まで変わってしまったこの袖をお見せしたいものです。 あの松島の雄島の漁師の袖さえ波でどんなにぬれても、私の袖のように色までかわることはありませんのに。 91.『きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣片敷き ひとりかも寝む(ん)』 作者:後京極摂政前太政大臣 部立:秋 意味:こおろぎが細々と鳴いていますよ。 白い霜が降りた夜の、寒々とした敷物の上で、私は着物の片袖を敷いて独り寂しく寝るのだろうか。 92.『わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし』 作者:二条院讃岐 部立:恋 意味:私の袖は、引き潮の時でも見えない沖の石のように、人は気づかないけれど、あの人を思う恋の涙で、乾く暇もないのです。 93.『世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも』 作者:鎌倉右大臣 部立:羈旅 意味:この世の中は、いつまでも変わらないでいてほしいなあ。 渚をこぐ漁師の小舟が、綱で引かれていく景色は、しみじみと愛しく感じられる。 94.『み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり』 作者:参議雅経 部立:秋 意味:吉野の山の秋風が吹く頃、夜もふけて、旧都のあったこの里は、寒々と衣を砧で打つ音がするようです。 95.『おほ(お)けなく 憂き世の民に おほ(お)ふ(う)かな わがたつ杣(そま)に 墨染の袖』 作者:前大僧正慈円 部立:雑 意味:身のほどに過ぎたことだが、この辛い世を生きる人びとの上に、おおいかけることであるよ。 比叡山に住み始めてから身につけている、この墨染の衣の袖を。 96.『花さそふ(う) 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』 作者:入道前太政大臣 部立:雑 意味:嵐が桜の花を誘って散らし、庭一面に雪が降っているように見えるが、本当に古りゆくのは私自身なのだなあ。 97.『来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ』 作者:権中納言定家 部立:恋 意味:いくら待っても来てくれない人を待つ私は、あの松帆の浦で夕なぎの頃に焼くと言う藻塩のように、身もこがれる程苦しんでいるのです。 98.『風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける』 作者:従二位家隆 部立:夏 意味:風が楢の葉に吹きそよぐならの小川の夕暮れは、秋のように感じられるが、六月祓(みなづきばらえ)のみそぎだけが、まだ夏であることを告げる証なのだなあ。 99.『人もを(お)し 人もうらめし あぢきなく 世を思ふ(う)ゆゑ(え)に 物思ふ身は』 作者:後鳥羽院 部立:雑 意味:ある時は人が愛おしく、またある時は人がうらめしく思われる。 思いどおりにならず、この世の中をおもしろくないと思うところから、あれこれともの思いをする私には。 100.『ももしきや 古き軒端(のきば)の しのぶにも なほ(お)あまりある 昔なりけり』 作者:順徳院 部立:雑 意味:宮中の古びた建物の軒先に生えている、忍ぶ草を見るにつけても、朝廷の栄えた昔がいくらしのんでもしのびきれない程、懐かしく思われることだよ。 百人一首の世界、いかがでしたか?何百年も昔に詠まれた歌でありながら、感動したり、何となく好きだなと感じたり、もしくは、あなたの気持ちを代弁してくれるような、そんな一首に出会えたのではないでしょうか。 恋の切なさや悲しさ、人生の素晴らしさや儚さ、自然に触れて動かされる心など、どの歌も現代の私達にも通じる感情や思いが映し出されていました。 お正月、「百人一首カルタ」で遊びながら、和歌の世界を味わってみるのはいかがでしょうか。

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百人一首(一覧・意味・覚え方・解説・作者・文法:百人一首の全て)

百人一首 作者

「百人一首」とは、百人の歌人の和歌を、一人一首ずつ選んだもので、一般的には1235年頃、藤原定家によって編纂された『小倉百人一首』のことを指します。 『小倉百人一首』と呼ばれるのは、定家がこれを編纂した場所が京都府嵯峨野にある小倉山の麓であったからと伝えられています。 定家は、親しい人に頼まれ、山荘のふすまに飾るためにと、百人の歌人の歌を一首ずつ色紙にしました。 これが今に残る「百人一首」のもとになったと言われています。 百人一首は、 全て勅撰和歌集(天皇や上皇の命によって作られた歌集)から選ばれ、奈良時代から鎌倉時代初めまでの和歌が、ほぼ時代順に配列されているのが特徴です。 次に、 部立(ぶだて・歌のカテゴリー)をみていくと、 「恋」43首、「春」6首、「夏」4首、「秋」16首、「冬」6首、「離別」1首、「羈旅(きりょ・旅情を詠んだもの)」4首、そして、これらの部立に属しないものを「雑(ぞう)」の歌が20首あります。 (また、 雑の中でも秋の季節が詠み込まれているものとして「雑秋」の歌が1首あります。 ) 恋の歌が大半を占め、四季の中では秋が最も多く収められていることが分かりますね。 今回は、「百人一首」を一首ずつ紹介していきます。 そして、誰もがお正月や学校の授業で一度はやったことがある「百人一首のカルタ取り」の遊び方とルールを説明していきたいと思います。 関連: 百人一首のルール解説 「百人一首カルタ」の遊び方とルールを紹介する前に、少し和歌の基本を解説したいと思います。 和歌は、五・七・五・七・七の三十一文字(みそひともじ)で表現される短い詩で、一首(いっしゅ)、二首(しゅ)と数えます。 また、最初の五・七・五までの部分を「上(かみ)の句」そして、残りの七・七の部分を「下(しも)の句」と言うことをおさえておきましょう。 では、1つ例を挙げてみていきましょう。 例:「春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」 この和歌では、「春すぎて 夏来にけらし 白妙の」までが「上の句」、「衣ほすてふ 天の香具山」が「下の句」となりますね。 次に、「百人一首カルタ」についてですが、カルタには 「絵札(読み札)」と「字札(取り札)」がそれぞれ百枚ずつあります。 絵札には和歌が一首書いてあり、読む人はそれを見ながら読み上げます。 一方、字札には、和歌の下の句だけが書いてあり、取る人はそれを取っていくというのが基本的なルールになります。 「百人一首カルタ」の遊び方 「百人一首カルタ」の遊び方を見ていきましょう。 〈ちらし取り〉 各個人で競い合う、最も一般的なカルタ遊びです。 【人数】 人数は何人でもかまいません。 一番多く取った人の勝ちです。 〈源平合戦〉 源氏と平氏の2つのチームに分かれて競い合う団体戦です。 【人数】 源氏と平氏の2チームでそれぞれ人数を揃えます。 ただし、相手チームにある取り札をとった場合は、自分のチームの取り札を相手に渡します。 〈坊主めくり〉 絵札(読み札)だけを使う遊び方で、和歌を知らなくても気軽に楽しめます。 【人数】 二人以上なら何人でもいいです。 そして、その札は次にお姫様が詠んだ歌の札を引いた人のものになります。 最後まで勝ち負けが分からない、そして逆転勝利もありうるゲームです。 下の句を読んで、下の句の札を取るのでこの名前がつきました。 また、木札(木製カルタ)であり、くずし字で書かれていることも特徴です。 【人数】 三対三のチーム(源氏と平氏に別れます)戦です。 相手の札を 取った場合は、自分のチームから一枚相手に渡します。 現在、競技カルタ大会は全国で年間約50を数え、毎年1月には名人戦、クイーン戦が開かれ、男女の日本一が決まります。 その速さ、激しさから「たたみの上の格闘技」とも言われています。 それが各自の持ち札になります。 相手の陣地(敵陣)にも同じように二十五枚並べられている状態になります。 しかし、読み手は百枚読むので、使わない札は空札となります。 十五分経つと競技が開始します。 自陣の札を取った時はそのままですが、敵陣の札を取った時は、自陣の札からすきなものを一枚相手に送ることができます。 「百人一首」一覧とその意味、人気のうた ここからは、百人一首の歌を紹介します。 百人一首の和歌は歌番号( 和歌番号)の順になっています。 それぞれの作者と意味、そしてどの部立(カテゴリー)に属しているか記しました。 夏になると真っ白な着物をほすという天の香具山に、真っ白い夏の着物がほしてあることだよ。 畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)とともに大和三山と言われ、昔から神の山として信仰されてきました。 3.『足引きの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ(ん)』 作者:柿本人麻呂 部立:恋 意味:山鳥の長くたれさがった尾のような、長い長い秋の夜。 私は恋しい人と離れて、たった一人、寂しく寝ることであろうか。 4.『田子の浦に うち出(い)でてみれば 白妙の ふじの高嶺に 雪はふりつつ』 作者:山部赤人 部立:冬 意味:田子の浦の長めのよいところに進み出て遥か彼方を見渡すと、あの白い富士山の山頂に今、雪が降り続いている。 5. 『奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき』 作者:猿丸大夫 部立:秋 意味:人里離れた寂しい山の中で、紅葉を踏み分けて鹿が鳴いている。 その声を聞く時こそまさに、秋の寂しさが心にしみて悲しく感じられたことだよ。 6.『かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける』 作者:中納言家持 部立:冬 意味:かささぎ(カラス科の鳥)の群れが翼を広げて橋をかけたという言い伝えがある天の川。 その橋がまるで霜が降りたかのように真っ白に見えることから考えると、もうずいぶん夜も更けてしまったことだなあ。 7.『天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に出(い)でし月かも』 作者:阿倍仲麻呂 部立:羈旅 意味:大空をはるかに仰ぐと、美しい月が出ている。 ああ、ふるさと春日の三笠山で見たあの懐かしい月がのぼっているよ。 「三笠の山」は、そこにある山で、ふもとに春日大社があります。 8.『わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり』 作者:喜撰法師 部立:雑 意味:私の住む小屋は都の東南にあり、このように心やすらかに暮らしている。 それなのに世間の人は、私が住みづらい世の中をのがれて、宇治山に隠れ住んでいるといっているそうだ。 むなしくわが身に 降る長雨を眺めて暮らし、物思いに沈んでいるうちに。 10.『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』 作者:蝉丸 部立:雑 意味:これがまあ、東国へ行く人も都に帰る人も、前から知っている人もまだ知らない人も、みんなここで別れ、ここで出会うと言う有名な逢坂の関所なのだなあ。 11.『わたの原 八十島かけて こぎ出(い)でぬと 人には告げよ 海人の釣舟』 作者:参議篁 部立:羈旅 意味:大海原に浮かぶ数多くの島々をめざして、私を乗せた舟はこぎだしていったと、どうか都にいる恋しい人にだけは伝えておくれ、そこの漁師のつり舟よ。 「八十島かけて」は、島から島へと巡っていくことを表現しています。 12.『天(あま)つ風 雲のかよひ(い)路 吹きとぢよ 乙女のすがた しばしとどめむ(ん)』 作者:僧正遍照 部立:雑 意味:空を吹く風よ、雲の中にあるという、天と地を結ぶ通路を閉ざしておくれ。 この美しく舞う天女たちの姿を、もうしばらく、ここにひきとめておきたいから。 その翌日に開かれた豊明節会(とよのあかりのせちえ)という宴で披露された「五節の舞姫」の美しさに感動してこの歌は詠まれたと言われています。 13.『筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがわ) 恋ぞつもりて 淵となりぬる』 作者:陽成院 部立:恋 意味:筑波山の峰から流れ落ちるみなの川は、次第に水かさを増して、深い淵になります。 それと同じように、あなたを思う私の恋心も積もり積もって、今では深い思いの淵のようになってしまいました。 こうなったのは誰のせいでもない、あなたのせいなのですよ。 春の七草が代表的なものです。 16.『立ち別れ いなばの山の 峰に生(お)ふる まつとし聞かば 今かへりこむ(ん)』 作者:中納言行平 部立:離別 意味:私はこれから因幡(いなば)の国に行きますが、行く先の稲羽山の峰に生えている松のように、皆さんが私を待っていると聞いたら、すぐにでも帰ってきましょう。 竜田川に紅葉が散り敷いて、流れる水を鮮やかな紅色にくくり染めにするなどということは。 勢いが激しいという意味で「神」また地名「宇治」にかかる。 のちには「ちはやふる」とも。 18.『住(すみ)の江の 岸による波 よるさへ(え)や 夢の通ひ(い)路 人目よくらむ』 作者:藤原敏行朝臣 部立:恋 意味:住の江の岸に寄る波の「よる」という言葉ではありませんが、昼の現実の世界はともかく、なぜ夜の夢の中の通い路さえ、あなたは人目を避けようとするのでしょうか。 住吉神社(住吉大社)と海岸松が有名でよく和歌に詠み込まれる歌枕となっています。 19.『難波潟(なにわがた) みじかき蘆(あし)の ふしの間も 逢は(わ)でこの世を 過ぐしてよとや』 作者:伊勢 部立:恋 意味:難波潟に生えている蘆の節と節の間のような、ほんの短い時間でもお逢いしたいのです。 それなのにそれさえも叶わず、この一生を過ごせとおっしゃるのですか。 20.『わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢は(わ)む(ん)とぞ思ふ(う)』 作者:元良(もとよし)親王 部立:恋 意味:あなたとのうわさでこんなにも悩み苦しんでいるのだから、今はもう身を捨てたも同じこと。 いっそ難波の海にある澪標(みおつくし)のように、この身をほろぼしてもいいから、あなたに逢いたいと思います。 21.『今来む(ん)と 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出(い)でつるかな』 作者:素性法師(そせいほうし) 部立:恋 意味:あなたが「今にも行こう」とおっしゃったばかりに、私は九月の長い夜をずっとあなたを待ちつづけ、とうとう有明の月が出るのを待つことになってしまいました。 22.『吹くからに 秋の草木の しを(お)るれば むべ山風を 嵐と言ふらむ』 作者:文屋康秀(ふんやのやすひで) 部立:秋 意味:山から風が吹くと、たちまち秋の草木がしおれてしまう。 なるほど、それで山から吹きおろす風を「嵐」と言うのだなあ。 23.『月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど』 作者:大江千里(おおえのちさと) 部立:秋 意味:月を見ていると、心が様々な思いに乱れてかぎりなく物悲しくなってくる。 私ひとりのためにやってきた秋ではないのだろうけれど。 24.『このたびは ぬさも取りあへ(え)ず 手向山(たむけやま) 紅葉の錦 神のまにまに』 作者:菅家(かんけ・菅原道真を尊敬した呼び方) 部立:羈旅 意味:今回の旅は、急な旅立ちでしたので、幣(ぬき)の用意もできませんでした。 かわりに手向山(たむけやま)の錦のように美しい紅葉を、幣としてお供えします。 神よ、どうか、御心のままにお受け取りください。 25.『名にしおは(わ)ば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな』 作者:三条右大臣 部立:恋 意味:「逢って一緒に寝る」という名前を持つ逢坂山のさねかずらよ。 その名の通りなら、さねかずらの蔓をたぐるように、人に知られないでこっそりあなたのもとへ通う方法があればよいのになあ。 26.『小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ』 作者:貞信公 部立:雑秋 意味:小倉山の峰を彩るもみじ葉よ、もしお前に心があるのならば、もう一度、天皇がおいでになるはずだから、それまで散らないで待っていて欲しいものだ。 27.『みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ』 作者:中納言兼輔 部立:恋 意味:みかの原を分けるように湧き出て流れる「いづみ川」。 その「いつみ」という言葉のように、いつ見たというわけでもないのに、どうしてこんなにあなたが恋しく思われるのでしょうか。 28.『山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へ(え)ば』 作者:源宗于朝臣 部立:冬 意味:山の中にある村は、いつも寂しいものだが、特に冬になると寂しさが増してくるものだ。 人の訪れも途絶え、あたりの草も枯れてしまうと思うと。 29.『心あてに 折らばや折らむ(ん) 初霜の 置きまどは(わ)せる 白菊の花』 作者:凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 部立:秋 意味:当てずっぽうに、折るなら折ってみようか。 初霜が一面に降って区別がつきにくくなっている白菊の花を。 30.『有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし』 作者:壬生忠岑(みぶのただみね) 部立:恋 意味:あなたとお別れした暁の空に、有明の月がそっけなく残っていました。 それからというもの、夜明け方ほど辛く悲しく思われるものはありません。 31.『朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪』 作者:坂上是則 部立:冬 意味:夜がほのぼのと明けるころ、辺りを見渡すと、まだ残っている明け方の月ではないかと思ってしまう程に、吉野の里に降り積もっている白雪よ。 春は桜、冬は雪の名所と詠われました。 32.『山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり』 作者:春道列樹 部立:秋 意味:山の間を流れる川に、風がかけ渡した柵があった。 いったいどんなものかと思ったら、それは流れることができないでたまっている紅葉であったよ。 34.『誰をかも 知る人にせむ(ん) 高砂の 松も昔の 友ならなくに』 作者:藤原興風 部立:雑 意味:年老いた私は、いったい誰を友とすればよいのだろうか。 あの長生きで有名な高砂の松でさえも、昔からの友人ではないのだから。 35.『人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香(か)に匂ひける』 作者:紀貫之 部立:春 意味:人の心は変わりやすいものですから、あなたの心は昔と同じままかどうか分かりません。 しかし、懐かしいこの里の梅の花だけは、昔のままの香りで咲き匂っていますね。 36.『夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ(ん)』 作者:清原深養父 部立:夏 意味:夏の夜は短く、まだ宵のくちと思っている間に明けてしまった。 沈みそびれた月は今ごろ、雲のどのあたりに宿っているのであろうか。 37.『白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける』 作者:文屋康秀 部立:秋 意味:草葉に白露がおりている秋の野原に風が吹きつけて、露が飛び散る。 それはまるで、糸で繋ぎとめていない真珠が散り乱れるようだなあ。 38.『忘らるる 身をば思は(わ)ず 誓ひ(い)てし 人の命の 惜しくもあるかな』 作者:右近 部立:恋 意味:あなたに忘れられてしまう我が身のことはなんとも思いません。 ただ、私への愛を神に誓ったあなたが、誓いをやぶったために神様から罰を受けて亡くなってしまうのではと、惜しまれてならないのです。 39.『浅茅生(あさじう)の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき』 作者:参議等 部立:恋 意味:まばらに茅(ちがや)が生えている小野の篠原の「しの」という名のように、私は、あの人への思いをじっと耐えしのんできたが、もうしのびきれない。 どうしてこんなに、あの人が恋しいのだろうか。 40.『忍ぶれど 色に出(い)でにけり わが恋は 物や思ふ(う)と 人の問ふまで』 作者:平兼盛 部立:恋 意味:誰にも知られないように、心に秘めていたのに、とうとう顔色に出てしまったなあ、私の恋は。 何かもの思いをしているのですかと人が尋ねるほどに。 41.『恋すてふ(ちょう) わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか』 作者:壬生忠見 部立:恋 意味:私が恋をしているという噂は、早くも世間に広まってしまったことだ。 誰にも知られないように、ひそかに私の心のうちだけであの人を思いはじめたばかりなのに。 42.『契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは』 作者:清原元輔 部立:恋 意味:私たちは、かたく約束しましたよね。 互いに涙にぬれた袖を何度もしぼりながら、あの末の松山をけっして海の波がこすことがないように、二人の仲はどんなことがあっても心変わりするまいと。 それなのにずいぶんな変わりようですよ。 43.『逢ひ(い)見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり』 作者:権中納言敦忠 部立:恋 意味:こうしてあなたと逢って夜を過ごしたあとのこの切ない心に比べると、逢う前のあなたを恋しく思っていた気持ちなどは、ものの数に入らないようなものだったということが分かりましたよ。 44.『逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし』 作者:中納言朝忠 部立:恋 意味:もしあの人と愛し合うことが全くなかったなら、あの人の冷たさや、わが身の辛さを恨んだりすることもなかっただろうに。 45.『哀れとも いふべき人は 思ほ(お)えで 身のいたづらに なりぬべきかな』 作者:謙徳公 部立:恋 意味:「ああ、かわいそうに」と言ってくれそうな人は、誰ひとり思い浮かばない。 私はきっとこのままあの人への恋に苦しみながら、むなしく死んでしまうのだろうなあ。 46.『由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え 行くへ(え)も知らぬ 恋の道かな』 作者:曾禰好忠 部立:恋 意味:由良の瀬戸をこぎ渡る舟人が、かじをなくしてただようように、この先どうなっていくのか行方もわからない、私の恋の道だなあ。 47.『八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり』 作者:恵慶法師 部立:秋 意味:いく重にもむぐらが生い茂ったこのさびしい家に、誰ひとり訪ねてくる人もないが、秋だけはやってきてくれたのだなあ。 48.『風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふ(う)ころかな』 作者:源重之 部立:恋 意味:風が激しいので、岩にうちつける波が自分だけくだけ散ってしまう。 それと同じように、あの人が冷たいので、私だけが心もくだけるほどにもの思いに悩んでいるこの頃ですよ。 49.『みかき守(も)り 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ』 作者:大中臣能宣朝臣 部立:恋 意味:宮中の門を守る兵士たちの炊くかがり火は、夜は赤々と燃え上がり、昼になると消えてしまう。 それと同じように、私の恋心も、夜になれば激しく燃え、昼になると消えるように深い物思いにしずんでいる。 51.『かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを』 作者:藤原実方朝臣 部立:恋 意味:こんなにあなたを恋しく思っていることさえ言えないでいます。 言えないから、あなたはそうとも知らないでしょうね。 ちょうど伊吹山のさし草が燃えるように激しい私の思いを。 52.『明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ(お)恨めしき 朝ぼらけかな』 作者:藤原道信朝臣 部立:恋 意味:夜が明けるとやがて日が暮れ、そしてまたあなたに会える夜が来ると分かっているのに、やはり恨めしい夜明けです。 きっとご存じないでしょうね。 54.『忘れじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな』 作者:儀同三司母 部立:恋 意味:あなたが「いつまでも忘れないよ」とおっしゃるそのお言葉を、これから先もずっと変わらないとはとても信じられません。 ですから、私はそうおっしゃってくださる今日を最後に死んでしまいたいものです。 55.『滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ(お)聞こえけれ』 作者:大納言公任 部立:雑 意味:この滝の流れが絶えて水の音が聞こえなくなってから、ずいぶん長い月日が過ぎた。 だが、その名高い評判だけは、流れ伝わって、今でもなお聞こえていることだ。 56.『あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふ(う)こともがな』 作者:和泉式部 部立:恋 意味:私は病気のために間もなく死んでこの世からいなくなってしまうでしょう。 ですから、あの世へ行ってからの思い出に、せめてもう一度あなたにお逢いしたいのです。 57.『めぐりあひ(い)て 見しやそれとも 分かぬ間に 雲がくれにし 夜半(よわ)の月かな』 作者:紫式部 部立:雑 意味:久しぶりに巡り会って、それかどうかも見分けがつかないうちに、雲にかくれてしまった夜中の月。 その月のように、あなただと見分ける間もないほど、あわただしくあなたは帰ってしまいましたね。 58.『有馬山 猪名(いな)の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする』 作者:大弐三位 部立:恋 意味:有馬山の近くの猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音を立てます。 そう、それですよ。 風になびく笹のように頼りないのはあなたの心の方で、どうして私があなたを忘れましょうか。 決して忘れません。 59.『やすらは(わ)で 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな』 作者:赤染衛門 部立:恋 意味:あなたが来てはくださらないものと分かっていれば、ためらうこともなく寝てしまったでしょうに。 来るとおっしゃるから、あなたをずっとお待ちして、とうとう西の山に沈もうとする月を見てしまったことですよ。 60.『大江山 いく野の道の 遠ほ(お)ければ まだふみもみず 天の橋立』 作者:小式部内侍 部立:雑 意味:大江山をこえ生野を通っていく道は、都から遠いので、まだ天橋立の地は踏んでみたこともありません。 それに、そこで暮らす母からの文も見ていません。 和泉式部が丹後国(京都府北部)にいた時に、都で歌合せがあり、藤原定頼から「お母さんに代作を頼んだのでしょうか」とからかわれたことから、この歌を詠んだと言われています。 61.『いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ(きょう)九重に にほ(お)ひ(い)ぬるかな』 作者:伊勢大輔 部立:春 意味:その昔、はなやかに栄えていた奈良の都で咲いていた八重桜。 今日はその八重桜がこの宮中で、美しく咲き誇っていることですよ。 62.『夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ』 作者:清少納言 部立:雑 意味:夜明け前に、にわとりの鳴き声をまねしてだまそうとしても、あの函谷関ならともかく、あなたと私の間の逢坂の関は、決して通ることを許しませんよ。 )をふまえた歌です。 63.『今はただ 思ひ(い)絶えなむ とばかりを 人づてならで いふ(う)よしもがな』 作者:左京大夫道雅 部立:恋 意味:逢えなくなった今となっては、諦めてしまおう。 そのことだけを、せめて人づてでなく、直接お目にかかって、お話しする方法があってほしいものです。 64.『朝ぼらけ 宇治のかはぎり たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木』 作者:権中納言定頼 意味:冬の夜がほのぼの明けるころ、宇治川(京都の宇治川)に立ちこめていた霧がとぎれとぎれに現れてくる。 その絶え間から浅瀬にしかけられた網代木が次々と現れてくることだ。 65.『恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ』 作者:相模 部立:恋 意味:あなたの冷たさを恨み、悲しい思いで流す涙にぬれて、かわく間もない袖が、やがて朽ちてしまうことさえ切なく、くやしい。 その上、この恋のために、私の評判まで廃れてしまうのは、本当に残念なことですよ。 66.もろともに あは(わ)れと思へ(え) 山桜 花よりほかに 知る人もなし』 作者:前大僧正行尊 部立:雑 意味:私がおまえを懐かしく思うように、おまえもまた、私を懐かしく思っておくれ。 山桜よ。 こんな山奥では花のおまえの他に、私の心を知る人は誰もいないのだから。 67.『春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひ(い)なく立たむ 名こそ惜しけれ』 作者:周防内侍 部立:雑 意味:春の夜のはかない夢のようなたわむれの手枕のために、つまらないうわさを立てられるでしょう。 それが、私には残念でたまらないのです。 68.心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな』 作者:三条院 部立:雑 意味:心ならずも、この辛い世に生きながらえていたなら、きっと恋しく思い出すのだろうなあ。 今こうして眺めている、今夜の月のこの美しい月を。 69.『嵐吹く 三室の山の もみじ葉は 竜田の川の 錦なりけり』 作者:能因法師 部立:秋 意味:激しい風が吹く三室山のもみじの葉は、川面一面に散りしいて流れていく。 その様子は、竜田川の錦織のように美しいことだなあ。 70.『さびしさに 宿を立ち出(い)でて ながむれば いづくもおなじ 秋の夕暮』 作者:良暹法師 部立:秋 意味:あまりの寂しさにたえかねて、庵を出て辺りを眺め渡してみた。 すると、どこもかしこも同じなのだなあ。 この秋の夕暮れの寂しさは。 71.『夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆(あし)のまろやに 秋風ぞふく』 作者:大納言経信 部立:秋 意味:夕方になると、家の前にある田の稲の葉に秋風がおとずれて、そよそよと音を立てる。 その秋風が、蘆ぶきのそまつなこの家にも、寂しく吹いてくることだ。 72.『音に聞く 髙師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ』 作者:祐子内親王家紀伊 部立:恋 意味:うわさに高い高師の浜の、きまぐれに立つ波のように、浮気で有名なあなたのお言葉は、心にかけますまい。 うっかり心にかけたら、あとで涙で袖をぬらすことになるでしょうから。 73.『高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山(とやま)の霞 立たずもあらなむ』 作者:権中納言匡房 部立:春 意味:遥か遠く高い山の峰の桜が咲いたことだなあ。 人里に近い山の霞よ、せっかくのこの桜を隠さないように、どうか立たないでおくれ。 峰のことです。 「深山(みやま)」に対する語です。 74.『憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを』 作者:源俊頼朝臣 部立:恋 意味:冷たかった人が、私になびいてくれるようにと、初瀬の観音にお祈りをした。 だが、初瀬の山おろしよ、あの人の冷たさが、おまえのように激しくなるようにとは、祈らなかったのになあ。 75.『契りおきし させもが露を 命にて あは(わ)れ今年の 秋もいぬめり』 作者:藤原基俊 部立:雑 意味:あなたが約束してくださったありがたいお言葉を、命のように大切にしてきましたが、ああその願いもむなしく、今年の秋も過ぎていくようです。 76.『わたの原 こぎ出(い)でて見れば 久方の 雲居にまがふ(う) 沖つ白波』 作者:法性寺入道前関白太政大臣 部立:雑 意味:広々とした海に舟をこぎ出して、遥か彼方を見渡してみると、雲かと見間違えるばかりに、沖の白波が立っていることだよ。 それと同じように、たとえ今は恋しい人と別れても、また必ず逢おうと思う。 78.『淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守』 作者:源兼昌 部立:冬 意味:淡路島から海を飛び通ってくる千鳥の物悲しい鳴き声のために、幾度目を覚ましてしまっただろうか。 須磨の関の番人は。 79.『秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出(い)づる月の 影のさやけさ』 作者:左京大夫顕輔 部立:秋 意味:秋風によって雲がたなびき、その絶え間から漏れ出てくる月の光が、何とまあ明るく、澄み切っていることだろう。 80.『長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ』 作者:待賢門院堀河 部立:恋 意味:あなたのお心が、いつまでも変わらないかどうかも分かりません。 あなたとお別れした今朝は、この黒髪が乱れているように、私の心も恋のもの思いに乱れています。 81.『ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる』 作者:後徳大寺左大臣 部立:夏 意味:ほととぎすが鳴いたので、その方向を眺めると、ほととぎすの姿はなく、夜明けの空にただ有明の月がひっそり残っているばかりであるよ。 82.『思ひ(い)わび さても命は あるものを 憂きに堪へ(え)ぬは 涙なりけり』 作者:道因法師 部立:恋 意味:つれない人を思い、嘆き悲しんでいるけれど、それでも死にもしないで、命は長らえている。 それなのに、辛さにたえきれないで、流れ落ちるのは涙であることよ。 83.『世の中よ 道こそなけれ 思ひ(い)入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる』 作者:皇太后宮大夫俊成 部立:雑 意味:ああ、世の中というものは、辛いことから逃れる道がないのだなあ。 辛さから逃れようと、深く思いつめて入ってきたこの山奥でも、鹿が悲しげに鳴いているのが聞こえる。 84.『長らへ(え)ば またこのごろや しのばれむ(ん) 憂しと見し世ぞ 今は恋しき』 作者:藤原清輔朝臣 部立:雑 意味:これから先、生きながらえていけば、辛いと思っている今のことが、いつか懐かしく思い出されるのだろうか。 かつては辛いと思った昔のことが、今では懐かしく思われるのだから。 85.『夜もすがら 物思ふ(う)ころは 明けやらぬ 閨(ねや)のひまさへ(え)つれなかりけり』 作者:俊恵法師 部立:恋 意味:一晩中、恋人の冷たさを恨み、思い悩んでいるこの頃は、いつまでも夜が明けず、朝の光がさしこまない寝室の戸の隙間までが、無情に思えてしまうことですよ。 86.『嘆けとて 月やは物を 思は(わ)する かこち顔(がほ)なる わが涙かな』 西行法師 部立:恋 意味:嘆けと言って月が私にもの思いをさせるのだろうか。 いや、そうではない。 本当の恋の思いのためなのに、まるで月のせいとばかりに、流れる私の涙であるよ。 87.『村雨の 露もまだ干ぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ』 作者:寂蓮法師 部立:秋 意味:通り雨が宿した露のしずくも、まだ乾ききらない杉や檜の葉に、もう霧が立ち上っている。 何と物寂しい秋の夕暮れであるよ。 88.『難波江の 蘆(あし)のかりねの ひとよゆゑ(え) みをつくしてや 恋わたるべき』 作者:皇嘉門院別当 部立:恋 意味:難波の入り江に生えている葦の、かり根のひと節のような、短い旅のひと夜の恋。 そのひと夜の恋のために、みおつくしのように、我が身をつくして、あなたを恋つづけることになるのでしょうか。 89.『玉の緒よ 絶なば絶えね ながらへ(え)ば 忍ぶることの 弱りもぞする』 作者:式子内親王 部立:恋 意味:私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。 このまま生きながらえていると、たえ忍ぶ力が弱くなってしまい、自分ひとりの心に秘めている思いが、外に表れてしまいそうだから。 90.『見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかは(わ)らず』 作者:殷富門院大輔 部立:恋 意味:あなたに恋い焦がれて流す涙で色まで変わってしまったこの袖をお見せしたいものです。 あの松島の雄島の漁師の袖さえ波でどんなにぬれても、私の袖のように色までかわることはありませんのに。 91.『きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣片敷き ひとりかも寝む(ん)』 作者:後京極摂政前太政大臣 部立:秋 意味:こおろぎが細々と鳴いていますよ。 白い霜が降りた夜の、寒々とした敷物の上で、私は着物の片袖を敷いて独り寂しく寝るのだろうか。 92.『わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし』 作者:二条院讃岐 部立:恋 意味:私の袖は、引き潮の時でも見えない沖の石のように、人は気づかないけれど、あの人を思う恋の涙で、乾く暇もないのです。 93.『世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも』 作者:鎌倉右大臣 部立:羈旅 意味:この世の中は、いつまでも変わらないでいてほしいなあ。 渚をこぐ漁師の小舟が、綱で引かれていく景色は、しみじみと愛しく感じられる。 94.『み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり』 作者:参議雅経 部立:秋 意味:吉野の山の秋風が吹く頃、夜もふけて、旧都のあったこの里は、寒々と衣を砧で打つ音がするようです。 95.『おほ(お)けなく 憂き世の民に おほ(お)ふ(う)かな わがたつ杣(そま)に 墨染の袖』 作者:前大僧正慈円 部立:雑 意味:身のほどに過ぎたことだが、この辛い世を生きる人びとの上に、おおいかけることであるよ。 比叡山に住み始めてから身につけている、この墨染の衣の袖を。 96.『花さそふ(う) 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』 作者:入道前太政大臣 部立:雑 意味:嵐が桜の花を誘って散らし、庭一面に雪が降っているように見えるが、本当に古りゆくのは私自身なのだなあ。 97.『来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ』 作者:権中納言定家 部立:恋 意味:いくら待っても来てくれない人を待つ私は、あの松帆の浦で夕なぎの頃に焼くと言う藻塩のように、身もこがれる程苦しんでいるのです。 98.『風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける』 作者:従二位家隆 部立:夏 意味:風が楢の葉に吹きそよぐならの小川の夕暮れは、秋のように感じられるが、六月祓(みなづきばらえ)のみそぎだけが、まだ夏であることを告げる証なのだなあ。 99.『人もを(お)し 人もうらめし あぢきなく 世を思ふ(う)ゆゑ(え)に 物思ふ身は』 作者:後鳥羽院 部立:雑 意味:ある時は人が愛おしく、またある時は人がうらめしく思われる。 思いどおりにならず、この世の中をおもしろくないと思うところから、あれこれともの思いをする私には。 100.『ももしきや 古き軒端(のきば)の しのぶにも なほ(お)あまりある 昔なりけり』 作者:順徳院 部立:雑 意味:宮中の古びた建物の軒先に生えている、忍ぶ草を見るにつけても、朝廷の栄えた昔がいくらしのんでもしのびきれない程、懐かしく思われることだよ。 百人一首の世界、いかがでしたか?何百年も昔に詠まれた歌でありながら、感動したり、何となく好きだなと感じたり、もしくは、あなたの気持ちを代弁してくれるような、そんな一首に出会えたのではないでしょうか。 恋の切なさや悲しさ、人生の素晴らしさや儚さ、自然に触れて動かされる心など、どの歌も現代の私達にも通じる感情や思いが映し出されていました。 お正月、「百人一首カルタ」で遊びながら、和歌の世界を味わってみるのはいかがでしょうか。

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百人一首(一覧・意味・覚え方・解説・作者・文法:百人一首の全て)

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百人一首(ひゃくにんいっしゅ、ひゃくにんしゅ)とは、100人の歌人の和歌を、一人一首ずつ選んでつくった秀歌撰、つまり歌集のことです。 よって、百人一首は、ひとつだけでなく、いろいろな百人一首があるわけですが、一般的に「百人一首」と呼ばれて知られているのは、「小倉百人一首」のことです。 小倉百人一首は藤原定家が編纂 この小倉百人一首は、藤原定家が編纂をしました。 時代は、平安時代末期から鎌倉時代初期。 元々は、歌と絵柄を使ったふすまを装飾する色紙とするというものでした。 それを、依頼を受けた定家が作成、飛鳥時代の天智天皇から鎌倉時代の順徳院まで、100人の歌人の優れた和歌を一首ずつ選び、年代順に色紙にしたためたものが、百人一首として定着したものです。 このようなものを「掛詞」(かけことば)といいます。 短歌の技法の一種です。 春すぎて 夏来たるらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 読み:はるすぎて なつきたるらし しろたえの ころもほすてう あめのかぐやま 作者: 持統天皇 現代語訳: 春が過ぎて夏となったようだ。 香具山に白い衣が干してあるのが見える 注釈: 持統天皇は女性の天皇で、内容も女性らしい着眼点があります。 百人一首では「夏来にけらし」は、万葉集では「夏来たるらし」となっています。 この歌について詳しく詠む: わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり わがいおは みやこのたつみ しかぞすむ よをうじやまと ひとはいうなり 作者: 喜撰法師 現代語訳: 私の庵は都の東南にあり、このように心静かに暮らしている。 それにもかかわらず、私が世を憂いて宇治山に引きこもったと世間の人は言っているようだ 注釈: 3句切れ 「しか」は「このように」の意味。 喜撰法師は平安初期の僧で歌人。 六歌仙の一人。 宇治山に隠棲し、仙人になったと言われてます。 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関 これやこの いくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき 作者: 蝉丸 現代語訳: これがあの、東国へ行く人も都へ帰る人もここで別れ、また、知っている人も知らない人もここで会うという逢坂の関なのです 注釈: 指示代名詞の初句に始まって、反復の弾むような調子の名歌です。 句切れなし。 体言止め。 天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん 作者: 僧正遍昭 現代語訳: 空の風よ、天に戻っていきそうな、 この美しい天女たちをとどめておくれ。 今しばらくその舞を見ていたいと思うから 注釈: わかりやすくすがすがしい内容で良く知られている歌です。 三句切れ 君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ 作者: 光孝天皇 現代語訳: あなたのために春の野に出て若菜を摘んでいると、春だというのに私の着物の袖にも雪が降りかかっています。 注釈: やさしく繊細な恋の歌。 雪の中でも花を摘んでいるのですよ、として、花と雪との美しい取り合わせと、人に寄せる思いを詠みます。 「つつ」はここでは「しながら」ではなくて、動作の反復・継続を表す接続助詞で、「し続けるの意味。 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに 作者: 河原左大臣 現代語訳: 陸奥の しのぶ ずりの模様のように心が乱れはじめるような私ではないのに 注釈: 有名な恋の歌。 「もぢずり」とは、 陸奥の 信夫( しのぶ)地域で産した乱れ模様に染めた布のこと。 そのように乱れた心、と視覚的な提示をして、自分の心の様がこのようである、としています。 「われならなくに」は万葉集にもある句で、「…のような私ではないのに」(でもそうなっている)と思いのままにならない自分自身の心を表す表現です。 「乱れそめる」は乱れ始めるの意味。 あなたに会ってから、もじずりの模様のように心が乱れ始めてしまった。 いつもならそうではないのに、と相手が特別であることを表します。 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは 作者: 在原業平 現代語訳: 神の時代にも聞いたことがない。 竜田川の水を紅葉が紅色にくくり染めにするとは 注釈: 2句切れ。 下二句は倒置。 「ちはやぶる」は「神」にかかる枕詞。 「からくれない=唐紅」 韓から伝わった紅であざやかな紅色。 在原業平はこの時代の有名な歌人で、六歌仙・三十六歌仙の一人です。 下の句の「から」「くれ」「くくる」の連続のカ行とラ行が小気味よい調子を作り出しています。 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ すみのえの きしによるなみ よるさえや ゆめのかよいじ ひとめよくらん 作者: 藤原敏行 現代語訳: 住之江の岸に寄せる波の「寄る」という言葉ではないが、夜の夢の中の通う道でさえ、あなたは人目を避けて出てきてくれないのでしょうか。 注釈: 句切れなし。 「寄る」「夜」の反復や、掛詞など技巧的な有名な歌。 「人目よくらむ」は「人目」を「さける」、「らむ」の推量「だろう」。 難波潟 短かき蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや なにわがた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや 作者: 伊勢 現代語訳: 難波潟の葦の節と節との短さのように、ほんの短い間でも逢わずに、一生を過ごしてしまえと、あなたは言うのでしょうか。 注釈: 作者伊勢は藤原氏の娘、平安時代の日本の女性歌 人。 三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。 長いを表すのに鳥の尾を使った歌を上に見ましたが、これは短いことを表すのに「節の間」を提示しています。 そのように、ちょっとの前でも会えない、会いに来てくれない、 相手のつれなさを詠ったものですが、感情的ではなく技巧がまさった歌です。 大江山 いく野の道のとほければ まだふみもみず天の橋立 おおえやま いくののみちの とおければ まだふみもみず あまのはしだて 作者: 和泉式部 現代語訳: 大江山を越えて、生野へとたどっていく道が遠いので、私はまだ天の橋立を踏んでみたこともなければ、母からの手紙も見ておりません。 注釈: 「歌の名人であるお母さんに、かわりに歌を詠んでもらったのでは」とからかわれた和泉式部が返した見事な歌。 生野の地名に「行く」、「ふみ」に「踏む」「文」(手紙)の掛詞の技法が使われています。 和泉式部はこの時代の代表的なすぐれた歌人のひとりです。 この一首を見ても、その際は歴然としています。 ほととぎす 鳴きつる方をながむれば ただありあけの月ぞ残れる ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる 作者: 後徳大寺左大臣 現代語訳: ホトトギスが鳴いた方を眺めやれば、ホトトギスの姿は見えず、ただ明け方の月が淡く空に残っているばかりだ 注釈: 技巧的ではなく、風情を籠めた情景を歌ったもの。 百人一首でホトトギスの出てくる歌はこれ一首のみだそうです。 終りに 百人一首の日、久しぶりに読み直したら、懐かしいですね。 皆さまもいくつか憶えたら、歌の歌留多の形でもお楽しみくださいね!.

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