別に君を求めてないけど横に居られると思い出す。 君の居ない昨日、オレの居ない明日

ヤキモチ

別に君を求めてないけど横に居られると思い出す

「お疲れ様。 ちゃんと聞いてたよー。 仕事だからね」 「仕事だから…か。 俺はサトへの気持ち込めて歌ったんだけどね。 やっぱりサトの心には、もう俺の入る隙はないのかな?」 真剣な眼差しに、心の奥がにぶい痛みを伝える。 「昨日ね、あれから自分の気持ちが全然見えなくなった。 一気に色々あったのもあるけど、私自身が曖昧に生きてたから。 自分がどうしたいのかさえ見えてなかった。 ううん、見ようとしてなくて」 「それで、サトの気持ちは見えたの?」 「見えたよ。 私ね、憲史から逃げるためにって、誰かを不幸にしないで 居られるようにって、そればかり考えてた。 それが人も自分も追い込むって 思ってなくて。 それに気付いてなかった」 「うん…」 「私、もっと愛して欲しいって多分ずっと願ってた。 隼人君が大切に、 ガラス細工でも扱うように私に接してくれる優しさで良いって思ってた。 だけど、本当はもっと隼人君自身の本音で愛して欲しくて、 それを素直に求められない、それを行動に出してくれない事に きっと歯がゆかったんだと思う。 って何か、話し難しくしちゃってるね」 「隼人の思う通りに愛情を表現して欲しいって事でしょ?」 「うん。 これからも…隼人君に愛されていたい。 隼人君の彼女で居たい。 隆久を思い出すのは、もうやめようと思う。 もう終わった恋だから」 「そっか、終わった恋か…」 悲しそうな顔に心が痛んだ。 「そう…終わった恋だよ。 私達の恋は3年前に終わってる。 今でも好きだって言ってくれる隆久の言葉は嬉しいけど、隆久には、 目の前の現実を見て欲しい。 過去の恋にとらわれたままじゃダメだよ」 「そっか。 それがサトの答えなんだね」 「うん。 彼女大切にして。 この先は、彼女のために歌ってあげて。 私は隆久のこれからの幸せ、心から願ってる。 違う道歩んでいくけど、 隆久の選ぶ道が、きらきら輝く道になって欲しいと思う」 「サトの気持ち分かった。 俺もいつか本当にサトの幸せを願える日が、 ちゃんと来るかな?」 2人を沈黙が包んだ。 「サトリちゃん探したよ。 時間だよ。 もう20時になるから、皆に挨拶して 帰る準備しないと。 約束に遅れたら悪いよ」 貴彦が声を掛けて来て、私は隆久に「じゃあ」と言って席を立った。 「サト、待って。 帰るの?」 隆久に手を掴まれた。 「隼人君が迎えに来てくれるの。 だからもう行かなくちゃ。 また明日。 またステージで会おう。 お疲れ様」 私は、精一杯の笑顔で隆久の手からすり抜けた。 「サト!この先もずっと、俺の サトを好きな気持ち変わらない。 いつかサトが戻って来るって、信じ続けても良いかな?」 後ろから聞こえた隆久の声に足が止まった。 もう迷わないって決めたから。 曖昧にしないって覚悟したから。 「山内さんお疲れ様でした。 これからも素敵な歌を作って下さい」 振り返って笑顔で頭を下げて、私は歩き出した。 隆久、ありがとう。 私を想ってくれて、想い続けていてくれて、本当にありがとう。 私、隆久と出会えて良かった。 片想いだった中学時代、 同じ高校に入れて嬉しかった事、同じクラスで楽しく過ごした日々、 付き合うきっかけになった花火大会。 公園でネコを可愛がった日の思い出も、優しいキスも全部、 私にとってかけがえのない時間でした。 今、胸に伝わる痛みも、この先きっと思い出になっていくから。 隆久の幸せを心から願えるようになりたいから。 隆久にさようならを告げる時だけは、 強がりなままの私でいさせて下さい。 去り際だけは、大人ぶった女で居させて下さい。 そうじゃないと、今はまだ涙が出そうになるから。 隆久、貴方を好きになって良かった。 貴方に好きになってもらえて幸せだった。 隆久との過去を綺麗な思い出にしていく勇気持てたから。 だから、さようなら。 私を見付けて歩み寄って来る。 一緒にホテルを出て、仕事関係の人に見付かる心配がなくなった頃、 隼人君の腕に、自分の腕を組んだ。 「もっと、くっついて」 隼人君は照れながら、ぽつりと呟いた。 「後でね」 「後で?後回しにするなら、もっと、もっと沢山くっついてもらうから」 いじけた素振りをしながら、笑顔の隼人君を見て、愛しいと思った。 部屋に入って腰を下ろした。 隼人君がお茶を淹れてくれる。 本当なら、楽しいままの時間を過ごすべきだろうけど…話さなくちゃ。 昨日、ちゃんと話せなかった事、今言わないと。 きっかけ逃すから。 「隼人君、話したい事あるんだけど良いかな?」 私の言葉に不安そうな顔を向けた。 「やっぱり…まだ怒ってるよね?」 「怒ってるとかじゃないかな。 実は、私も話さないといけない事あるの。 多分、話したら隼人君にとってショックは大きいと思うけど、今言わないと この先、話すきっかけなくしちゃうから」 「分かった、ちゃんと話そう」 「大学に山内隆久っているよね?この前、友達になった人だって、 私に話してくれたよね。 実は、その人は私の元彼なんだ。 知り合った頃、憲史のせいでお母さんが自殺しちゃった彼の話しを、 友弘とか私がよく話したの覚えてるかな?それが、山内隆久なの」 「え?北海道出身だったなんて言ってなかったよ」 「うん。 言ってないって隆久から聞いた。 今回の仕事で再会したの。 隼人君と友達になってから、茜に私の今の彼氏だって聞かされて、 それで言うきっかけ失くしたんだと思う」 「そうだったんだ…隆久が…。 高校2年の頃、サトちゃんよく、 元彼を思い出して泣いたりしてたけど、隆久と再会してどう思ったの? 再会して…動揺したから、昨日俺と…って事?」 「ううん。 でも、隆久がTVに出てる姿見てから、思い出したりしてた。 隼人君を好きなのにって、頭では分かってるのに頭から離れなくて。 自分の気持ちが見えなくなって、正直どうして良いか分からなかった」 「うん…」 「再会して隆久と話して余計に分からなくなった。 だけど、昨日隼人君が他の女の人と居るのを知って、すごく苦しかった。 自分も気持ち揺れ動いてたのに、むしの良い人間だよね。 私最低だね」 「だから…俺と別れたいとか?」 「違うよ。 昨日、隼人君が『寂しい時もある』って正直に話してくれた時に、 気付いたんだ。 もっと、隼人君の本音を聞きたかったって。 もっと弱音を 私にちゃんと言って欲しかった。 でも、言えなくしたのは私なんだよね。 遅過ぎるけど気付いたし、自分が隼人君を求めているんだって、分かった。 ただ優しくして欲しいんじゃなくて、もっともっと本音が、 隼人君自身の気持ち知りたい。 もっと愛情素直に求めて欲しいよ」 「サトちゃんのせいにする訳じゃないけど、確かに言いにくかった。 過去から逃げたくてもがいてるの知ってたから。 俺が寂しいって言えば、 サトちゃんがもっと苦しむって思って、だから言えなかった。 俺が支えていかなきゃって考えるだけで、サトちゃんに甘えれなかった。 過去に憲史に襲われかけて、恐怖心持っているの知ってたから、 『好き』の先を求めちゃいけないんだって、そう思い込むしか出来なかった」 「ごめんね。 そんな気遣いも見えてなかったの、私。 頼ってばかりで、 隼人君に甘えるばかりで、何も気付いてあげられなかった。 仕事忙しいを理由に会う時間も取れなくて…でも、頑張れば1泊でも 隼人君に会いに来る機会だって、何度でも作れたのに、しなかった。 隼人君は分かってくれるとか考えてたから」 「サトちゃんが札幌で仕事に遣り甲斐感じてるの知って嬉しかった。 過去の恐怖とか少しはぬぐえているんだって、そう思えたから。 だけど…反面寂しかった。 どんどん置いてかれてるみたいだった。 職場の人達も本当に良い人ばかりだし、俺は必要ないんじゃ?って バカみたいに落ち込んだりして…。 俺はまだ学生でガキのままで、 サトちゃんは社会人としてどんどん成長して、距離感じたりしてた」 「私、今の隼人君の本当の気持ちが聞きたい。 真里さんって人に 少しでも心揺らいだ事があったんじゃないかって、心配なんだ。 私自身が離れている事で、隼人君への気持ち分からなくなったのと 同じように、隼人君も迷ったりしたんじゃないかなって…」 一気に、お互いの今まで押し込めていた気持ちを話していた。 今まで、こんなにお互いの本音をぶつけ合った事なんてなかった。 それは、付き合うって言葉も交わさないまま、離れ離れになった事、 私の置かれていた状態が、そこまで隼人君に気遣いをさせていたから。 一呼吸おいて、隼人君は言葉を口にした。 「真里に対して心が揺らぎそうになった事がない訳じゃない。 サトちゃんと会えなくて辛い時、『2番目で良いから愛して欲しい』って 言われた時、迷いそうになった事もある。 だけど、言い訳じゃなくて、 その時一番最初に頭を過ぎったのが、サトちゃんの笑顔だった。 俺の腕の中に居るサトちゃんの存在を思い出した。 一瞬でも真里に 揺れ動きそうになった自分に、嫌気がさした。 嘘じゃない 」 「信じて良いかな?」 「信じてなんて言って良いか分かんないけど、これだけは約束する。 もう、真里をここに入れたりしない。 誰にでも優しくするのはやめる。 俺が大切にしたいのは、やっぱりサトちゃんって存在だけだから。 だからこの部屋は、サトちゃん以外の女は入れない」 「信じるよ。 隼人君を信じる」 「サトちゃんにお願いして良い?」 「うん」 「『愛してる』って言って欲しい、その言葉ずっと望んでた」 今まで見た事のない隼人君の表情だった。 こんなに切なそうな顔見た事なかった。 私が隼人君を追い詰めて、 苦しめていたんだね…。 私は座っている隼人君の前に膝立ちをして、彼の両頬に触れた。 「隼人君のこと愛してるよ。 これからも愛させて」 隼人君が私の背中に手を回して、抱き締められる。 「もっとサトちゃんに愛してもらえる男になるから。 もっとサトちゃんに 『愛してる』って、自信持って言える男になるから」 「うん。 もっと愛して。 沢山愛してるって言って」 「今以上、本気になって良い?サトちゃんを誰にも渡さないくらいに、 愛しすぎるくらい、サトちゃんを想っちゃうよ」 私達は朝まで、互いの存在を確かめるように、息遣いも、ぬくもりも、 脈打つ音さえ近くに感じながら、限られた時間を共に過ごした。 私達は今まで、弱さをぶつけ合う勇気がなかった。 これから先は、弱さを素直に表現していける、そんな強さを持てたから、 迷いそうになった時、自信がなくなった時、愛情が欲しい時、 それをちゃんと伝えていけるから。 もう、迷わないよ。 この腕の温もり、もう忘れたりしないよ。 もっと愛して欲しいから、もっと愛させて欲しいから、 今より強くなろう。 今より弱くなろう。 全てを言える2人でいよう。 これから先の人生のドアの先に、どうか貴方が居ますように。

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【懐かしい歌No.70】「香水」瑛人(2019)

別に君を求めてないけど横に居られると思い出す

何故か不名誉なことを言われてしまった近接戦闘訓練が終了し、昼となった。 「刀哉君隣いい?」 「万事オッケー」 昼食である『鮭のムニエル~きのこを添えて~』を食べていた俺の隣に座ったのは、誰であろう叶恵であった。 「モグモグ……刀哉君って、私たち以外の人とはほとんど喋らないよね」 「ん? そうか?」 「そうだよぉ」 叶恵の言葉に、俺は少し今までのことを思い出してみる。 ……うん。 こっちに来てから、勇者の中ではいつもの4人以外で喋った相手って居ないな! 「まぁほら、俺って色々特殊だし」 「なにそれぇ。 刀哉君と仲良くなりたいって子だっていっぱいいるんだよ?」 「え? マジマジ? 誰?」 「古川さん」 「……よりによってあいつかよ………」 「後は水沢さんに、湯江ちゃんと、南ちゃん!」 「全員それ系じゃねぇか!」 美術部の腐女子軍団だよそれは! 俺は地球にいた頃のあいつらを思い出す。 『グヘヘ』と俺を見て笑う……正確には俺と樹や拓磨を見て笑う姿が鮮明に思い出せて、ブルリと身震い一つ。 たまに零す『尊い』という言葉がマジで怖いんだよなぁ。 頼むから妄想は二次元キャラだけで済ませてくれ。 あ、後は花蓮ちゃんも刀哉君と仲良くなりたいって言ってたよ」 「うんそれは普通にありがたい」 花蓮ってあの子だろ? 確か小動物を彷彿とさせる元気さを誇る女の子。 よく飛んでるイメージの。 なお低身長なのだが、余談でしかないだろう。 余談余談。 「というか、ならなんで俺に話しかけてこないんだよ。 俺はいつでもバッチコイ状態だぞ? 別に孤立したいわけじゃないし」 「さぁ? でも花蓮ちゃんは『正妻を差し置いて喋りかけるとか無理無理』って言ってたよ」 「……そ、そう」 うん。 俺ら以外にとって、俺らは一体マジでどう見えてるんだか。 とはいえ、まぁ別に悪い気はしないか。 仲がいいと思われてるってことだろうし。 複雑なところだけど。 そもそも、恋愛感情があるかと聞かれたら、う~んと唸るところだけどな。 実際美少女だけど、幼馴染みだし、正直男女の関係はな……。 「ん~? 何?」 「いや別に。 ただ可愛いなって思って見てただけ」 「そう? ありがとうっ!」 今のでこの反応だからな? 正直攻略難易度はある意味高いと思う。 俺が言う『可愛い』は、多分叶恵にとっては同性の友達に言われてる感覚なんだろう。 同時に、叶恵が言う『好き』も、友達同士で言う好きでしかない。 あるあるの一つだと思うのは俺だけ? ピシャリと珍しく敬語で言われたので、正直に謝罪。 まぁ『図書館ではお静かに』はやはり決まり文句だよな。 一度言われてみたかったんだ。 昼食を食べると少しだけ休憩時間があるので、その時間は図書館で本を読むのが日課だ。 「……」 「……」 無言の時間が過ぎる。 しかしそこに気まずさは無く、むしろ心地よい。 この一時だけは、勇者だの訓練だの忘れて、リラックスができる。 普段からふざけたことを考えていても、結構精神的に辛いこともある。 癒しの時間は、必要なのだ。 「……」スタスタスタ ふと、ルリが無言でこちらに来る。 なんだろうと思いつつも、並行して本の内容に目を走らせる。 ルリは俺の隣に座ると、同じように本を読み始めた。 特に俺になにか用があったわけじゃないらしい。 あれか? もしかして人が近くにいた方が読めるタイプなのか? そんなタイプほんとにいるんだな。 「……」 「……」 ペラペラ、とページをめくる音だけが響く。 とはいっても響いている音はルリの本だけで、俺の本の音は響いていない。 速読のおかげで早く読めるようになったのはいいんだが、代わりにページのめくる速度が尋常じゃなく早くなって、とてもうるさいのだ。 だから毎回読んでる本を対象に『 消音 ( サイレント )』という風魔法をかけている。 難易度は初級と、同系列の魔法である『 消音領域 ( サイレントフィールド )』より難度が低いが、それはこれが"空間"に対して発動する魔法ではなく、単体の"物"、もしくは"者"に対して発動する魔法だからだ。 とはいえ、俺としては使いようだと思うわけだが。 それから十数分本を読んでいたのだが……。 「……すぅー」 いつの間にかルリが隣で寝てました。 本を読み終わってパタンと閉じた瞬間に聞こえてきた寝息に横を見てみれば、思わずドキリとしたね。 なんというか、こう、ゾワリと襲う背徳感。 イケナイことをしている気分になるぜ。 中々可愛い寝顔で、無性にほっぺをつつきたくなる。 それにしても幾ら周りに無頓着とはいえ、男の近くで無防備に寝るのはどうかと思うわけよ。 もし俺という紳士じゃなかったら、この背徳感に支配されてナニをナニされてたか分からないぞ? なんてR-18思考は置いておいて……ってまて、もしかしてこれはロリコンの思考なんじゃないか? ……切り替えよう。 気にしても仕方ないというか、これ以上考えたくない。 とりあえず[無魔法]でルリを持ち上げて、受付のあの机まで運ぶ。 無魔法は簡単に言えば質量を持った魔力だから、こんなことも出来てしまう。 机の下に毛布らしきものがあったので、取り敢えずそれをかけておく。 紳士的な対応ができる俺、マジ女子からモテるだろうな! ……自分で言ってて悲しくなるな。 なんてことを考えつつ、訓練がもう少しで始まるので図書館から退出した。 「詠唱破棄からの魔法発動で、10m地点から魔法を当ててみて。 属性は好きなのでいいよ」 マリーさんがいうや否や、遠くに見える的に魔法を打ち始める勇者達。 なお、詠唱破棄ってよく良く意味を考えれば無詠唱と同じじゃね? ってなるんだが、詠唱破棄は「我、汝と血の契約を結びたり……『 黒血の契約 ( ブラッディ・コントラクト )』」で表すと、『我~結びたり』は省略できるが、『 黒血の契約』、つまり魔法名だけは言わなければならない。 一方で無詠唱は、魔法名すら省略し、一言も言葉を発する必要は無いことだ。 余談だが、「我、汝と血の契約を結びたり……『黒血の契約』」は俺が昔に友人から聞いたものであって、決して俺の若さゆえの過ちから作られたものではないのであしからず。 ちなみに本当は何節もあるのだが、長いので省略。 閑話休題 ( それはともかく ) そのため、今回求められているのはその魔法名だけの発動だ。 無論詠唱をした方が威力も高いし精度も上がる。 安定して完成するのだが、やはり実際の戦闘、しかも勇者となると、魔法名だけ呟く高速発動が求められるのだろう。 ちなみに無詠唱で発動できるのは、今の所俺を含めて数人。 拓磨も無詠唱が可能……なのだが、いずれも俺と比べると練度が下がる。 というのも、無詠唱での発動は詠唱破棄の時と比べて、出力が半分ほどにまで低減してしまうらしい。 一番魔法を上手く使えている……春風さん? も、無詠唱では6割まで落ちてしまうのだとか。 通常 ( フル詠唱 )時と比べると4割程の出力らしい。 無詠唱で通常の8割の出力で使える俺はやはり異常なのかね。 イメージの問題か、別のところか。 みんなが必死に的に当てている中、悠々と俺は50m地点から火と水魔法の玉、『ファイアボール』と『ウォーターボール』を出現させ、的に飛ばす。 通常ならそこまで射出速度は早くないこの魔法だが、現在は速度を高めているので、通常の5倍以上のスピードで飛んでいる。 パシュン!と的の真ん中を綺麗に射抜いたのを確認。 結果は上々だな。 次は横に歩きながら……命中。 走りながら……命中。 ジグザグに走りつつ、フェイントなんかも加えて……命中。 それぞれ別の方向に飛ばしてから的に向かうようにして……命中。 目を瞑って耳を塞いで走って……命中。 「よし、ウォーミングアップは終了っと」 ここまでは準備運動である。 次からが本番だ。 確か今の所90mまでは完了してるから、ようやく100mか。 凡そ先ほどの二倍の距離。 この距離だと流石に肉眼での的の精確な視認が難しくなってくるので、ここは[遠視]を発動。 魔法は4種でいこう。 火、水、風、土だな。 四種類の綺麗なボールが宙に出現し、弾かれたように的へと向かう。 ……残念。 一つだけピッタリ真ん中では無かった。 まぁ的に当たりはしたからいいか。 んじゃ次。 毎回持ってきてる剣を持って、架空の敵と戦いながら発動……命中。 継続的に魔法を別方向に放ちつつ発動……命中。 「……トウヤ君?お姉さん流石にそれはどうかと思うの」 次は逆立ちから……としていたところにマリーさんが声をかけてきた。 引き攣った笑みというオプション付きで。 「ども。 逆立ちですか? 確かにそんな場面ないですよね」 「いやそれじゃないよ? 100m地点で行動しながら無詠唱で複数発動して当てるのはどうなのって話。 私ですら出来ないんだけど?」 「……それは、その、俺には何とも」 自分より年上の人からそんなこと言われた時って、対応に困るよな。 グレイさん然りマリーさん然り。 というか、やっぱり異常なのね。 いや分かってるけども改めて実感するというか、マリーさんからしたら腸が煮えくり返るような気持ちなのだろうか? 「あっはは、ゴメンゴメン。 別に皮肉とか嫌味とかじゃないよ。 お姉さん位大人になると、むしろ感動するくらいなの」 恐らく俺の内心を見抜いたのだろう、そんな発言をしてきたマリーさんは、笑顔で首を振った。 「それにしても……トウヤ君魔王倒したら 宮廷魔術師団 ( ウチ )に来ない? 私とタッグ組もうよ。 トウヤ君の実力なら今からでも入れるというか、最高戦力と言っても過言じゃないよ」 「いや、遠慮しときます。 魔王を ( 〃〃〃 ) 倒したら ( 〃〃〃〃 ) 元の世界 ( 〃〃〃〃 ) に帰る ( 〃〃〃 ) つもり ( 〃〃〃 ) なんで ( 〃〃〃 )」 心にもないことを、俺はなんの躊躇いもなく言う。 地球に帰れる可能性としてはほとんど少ないのではないだろうか。 今朝の婚約話もあって、尚更そう思う。 勿論、帰れないという確証がある訳じゃない。 だが、魔王を倒すと帰れるという話も信じ難い。 そんなことを考えていたら、マリーさんが急に背後から抱きつくようにくっついてきた。 本当に一瞬のことで、俺は意表をつかれ、回避することが出来なかった。 しかも、わざわざ自分の胸を強調するようにって……。 マリーさん……意外と胸ありますね……。 耳元で囁かれる甘い誘惑ですよ。 息が当たる度に身体が反応しそうになってるのをメチャクチャ頑張って抑えてます。 マリーさんは自分の容姿を自覚した上でやってるのだろうか? 本当に危ない危ない。 「……そ~お? ま、今回はトウヤ君がムッツリスケベだと知れたから良かったかな。 これ攻めたら落とせる?」 「落とせません! 俺をなんだと思ってるんですか。 勇者が肉欲に溺れちゃダメでしょ……」 この人、すんごい人懐っこいけどたまにこういう所あるから困る……役得と思わないことも無い。 というか、今まで胸板に指を這わせるだけだったのに、何で急にこんな大胆になったんだか……。 もしかして本気で俺を宮廷魔術師団に誘おうとしてるのだろうか? だからわざわざ自分の体をつかってまで? ということは、あの提案に頷いてたら本当に……? ……いやホント後悔してない。 無論俺の家は外の物置だ。 こういう時は夜風に当たれて意外と気持ちいい。 寝るときは寒いけど。 俺が未だに王城の部屋で寝ないのは、こういう背景があるからとも言える。 「今日は図書館じゃなくて気配遮断の訓練だな」 この時間帯からは、いつもなら図書館にお邪魔するのだが、今日はルリは疲れてるっぽかったし[気配遮断]と[気配察知]の訓練をすることにしよう。 王城の壁に沿って移動する。 [気配遮断]で気配を消して、[気配察知]で内側を探る。 夜はそこら中に 隠れてる ( 〃〃〃〃 )気配があるから、王城内にはあまり入れない。 図書館にも窓から入る始末だ。 隠れてるってことは良からぬというか、周りに悟られないようにしている事だし、なんか変なことをしたらその場で叩き潰すつもりではいるのだが、今の所隠れた気配がなにかした感じはない。 俗に言う、王族お抱えの諜報組織とかだろうか。 となると、今は勇者を監視してるってことか?勇者を監視してる奴は、俺という勇者に監視されているのか……。 深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているという言葉の代名詞だな。 まぁ、別に部屋の中を見ているわけじゃないし、今のところは放置である。 というか、俺の[気配遮断]と[気配察知]のレベル6なんだけど、もしかして俺の方がレベル高いのか? いや、勇者だからスキルの効果も底上げされてるだろうし……まぁ今の状態だと相手はこっちに気づいてないっぽいし、別にいいか。 それからぐるりと王城を回ってみたが、やはり怪しい動きをしている奴はいなかった。 いや、壁と壁の間らへんでじっと身動き一つしないのは怪しい動きだろうけどさ。 ただこういう相手は暗殺とか得意そうだから、なにかやばいことを起こした勇者は、こっそり暗殺……なんてこともあり得そうだ。 俺も気をつけよう。 「さて、と、何か眠くなってきたな」 いつもならこれから素振りを開始するのだが……隠れるので気を張りすぎたのだろうか? 瞼が急に重くなってきた 「しゃーない。 一旦今日は寝るか」 物置の中へゴー。 「ッ!?」 目が覚めた瞬間横にグルリと回りながら移動。 その瞬間、さっきまで俺が居た場所に錆びた剣が刺さる。 「……あの隠れてる奴らかと思ったが、お前かゴブリン」 剣を握っているのは、俺にとってはこの世界で3匹目のゴブリンだ 半覚醒状態で身体を無理やり動かした代償か、身体がとても痛い。 が、命が助かっただけ良しとしよう。 だが、不意打ちさえされなければ雑魚も同然だ。 立てかけてあった剣を掴み、その勢いごと一閃。 刹那の後、ゴブリンの首から血が噴出し、ソレがゴトリと床に落ちる。 「はぁ、マジビビった」 まさか不意打ちを受けるとは思わなかった。 毎日油断せずに気を張っていたからこそできた事だな。 さて、寝ようと思った時、俺は床の惨状を見た。 「……この床で寝るのは無理だな」 血飛沫が飛び、今も尚ゴブリンの死体から血が出続けている。 こんなことなら一旦外におびき寄せてから倒さばよかったなと嘆息。 今日は眠れなさそうだ。 物置内を掃除して、俺は眠れない夜を過ごした。

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瑛人の香水はダサい?なぜ人気なの?歌詞の元カノは絶対ギャル説

別に君を求めてないけど横に居られると思い出す

ジブリが奇をてらったクソしか作らなくなり 細いも奇をてらったクソしか作らなくなり 今まで奇をてらっていた新海が王道を作ったら売れたんだよ。 オタクにはわからんだろうけど高クオリティのアニメ自体が一般人は殆ど目にすることが無い。 一般向けで高クオリティなのはジブリと細井の作品くらいだったのに、その二つがどんどん一般向けから離れていったことで、アナと雪の女王や、君の名のような王道高クオリティアニメーションに需要が一極化したんだよ。 アニメ自体は映像的に実は需要があるんだが、一般にも広く受け入れられるようなアニメは不足してるんだよ。 オタクはエヴァが一般にも受けいれられてると思ってるらしいが、エヴァは内容だけ見れば美少女、ロボ、グロ表現とオタクが好む三種の神器が揃った超オタク向けコンテンツや。 でリピーターが多いとしたら、それは設定回収と細かな描写をどんどん見つけて矛盾点解消や時系列を正確にしていく作業をするためだろ… 時系列知りたくてググったらかなりの数のサイトが見つかったが、そのブログ主たちは何度も見に行ってるんだろうね、時系列を完全に近づけるために なぜこんなことになったかと言えば、設定や因果関係の多さのために、整理して作ると尺が足らず、時系列無視してツギハギしてあるから 一回見ただけじゃ「あーハッピーエンドだねー。 設定も凝ってるねー」で終わり。 大抵の人は時計など時間が分かるものを見て時系列を確認なんてしないし、組紐の。 夜だな、昼だな、夕方だな、くらいのもの なんでこれ劇場アニメでやったんだろ、ってくらい、設定が細かすぎるし、時系列の描写が分かりづらい それなら前半の日常ギャグパートスパッと飛ばして、エンタメ要素は抑えて描写したほうがまだ分かりが良かった そもそもエンタメに寄せたはずなのに、滝や三葉の頭の馬鹿さ加減について、普通に見ているだけでは、ほぼ断定して推測できるレベルには分からないというのは、非常な欠陥だと思う。 誰もが「こいつら頭悪い」と思えなければ、3年の時差に気づかないことや、糸守の発見手段の悪さを擁護することが難しくなる あと、ラストの5年後の現代で二人が二人と気づくときの演出はくどすぎる。 エンタメ重視なら、スパッと決めんかい。 リアルに寄せたせいでモヤモヤ。 ハッピーエンドにした点はエンタメに寄せたけど、エンタメ要素は実際のところ、最初の前前前世とハッピーエンドくらいのものだと思う ティーン層だかツイッターだか、マスゴミだか宣伝だか何のせいだか知らないが、ここまで大事になて、新海が可哀想でしかない、これは本当に思う。 そしてそれが残念だ 事前知識が必要ないこと 映画はジブリやディズニーが証明しているけど、事前知識が必要ないほうが当然いい 特に中高年は未だにインターネットに疎い人が多いから、そこら辺の層にも来てもらうためには重要な要素 恋愛要素が軽い 恋愛系は男は敬遠するが、恋愛要素が軽いから抵抗なく観に行ける マニアックではない 女の子はいつの時代も恥じらいがあり、男に比べて下ネタが苦手 それは周りの目を気にしてる傾向が強いため しかし、恋愛モノは女の独壇場 今の20代、30代は普通にアニメ観てた世代 10代の学生たちがアニメ映画観に行くのは普通だけど、昔のジャンプ世代とかでアニメ見慣れてるのは実はもう30代 アニメに抵抗感ない世代は実は広い アニメ文化はそれだけ浸透してるし、彼らはガラケー世代だからネットはバリバリ使えるためスマホも普通に使いこなしてる つまり、10代も20代も30代もアニメに抵抗少なくて、男女で会話できる内容のモノで盛り上がれる 観てない人にオススメしやすい内容で、今はSNSが普及しまくってるから「試しに観に行こう」って人が続出 面白くないにしても、当たり障りのない内容だしハッピーエンドで終わるからボロクソ言う気も起らんしね 何にせよこれだけ金を動かせた結果は素晴らしい。 いまの日本のメディアの力を再確認できた。 君の名は。 がエンターテイメントとして佳い作品であることはその点から明らかだと思う。 しかし、見た人に何かうったえかけるような強いメッセージ性、芸術性、思想があるかと言われれば無いであろう。 しかしそれが無いことは必ずしも劣ることにつながるだろうか。 それは人それぞれの価値に依るかもしれないが、新海誠の他の作品はともかく、今回の君の名は。 にそれを求めるのは、テーマパークに行って美術館にあるものを求めているようなもののような気がする。 君の名は。 を見てジブリ作品が様々な視点で見ても魅力的なものだったのだということを知れた。 私はその点で君の名は。 という作品に感謝している。 それとともに、メディアが普遍的になり多種多様な情報を容易に得られるようになった今日、群集心理やメディアの意図に、無意識に絆されてしまわぬよう自分の意見を健全に保たねばならないと思う。

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